取り組んでいます。シメジの研究

(岐阜県森林研究所) 水谷 和人



【「シメジ」と名の付くキノコ】

名前に「シメジ」と付くキノコは、非常にたくさんあります。現在、誰もが知っている有名なシメジと言えば、スーパーに並ぶブナシメジでしょうか。手元にあるキノコ図鑑では、約6%に当たる55種のキノコの名前にシメジと付いています。このうち9種はキシメジ科シメジ属のキノコですが、他の属や科にも広く存在しています。シメジの語源は、湿地(雨の後に現れる)、占め地(多数がかたまって発生する)と言われていますが、シメジ達の個々の生活スタイルや姿形は変化に富んでおり、シメジ達の間に共通性はあまりないように感じられます。


【シメジ御三家】

シメジと名の付くキノコには優秀な食用キノコがたくさんあります。代表的なものは、文字どおり本当のシメジという意味で、ホンシメジがあげられます。その他に、シャカシメジ、ハタケシメジも、美味な食用菌です。ホンシメジ、シャカシメジ、ハタケシメジは、シメジ達の中でも代表的な食用キノコで、シメジ御三家と呼んでも過言ではありません。ここでは、シメジ御三家の特徴、当研究所での取り組みをご紹介します。


【異なる生活スタイル】

ホンシメジとシャカシメジは菌根性キノコで、樹木の生きた根に共生します。樹木の根から養分をもらって生活しており、共生相手となるアカマツ・コナラ林に発生します。ホンシメジはダイコクシメジ、シャカシメジはセンボンシメジやイボコゴリなどとも呼ばれています。ホンシメジは一部で施設を利用した人工栽培が始まっていますが、シャカシメジは人工栽培ができません。

ハタケシメジは腐生性キノコで、土中に埋まった木材を栄養として生活しており、畑や庭地、道端などに発生します。あまりキノコ狩りの対象にはなっていませんが、一部で施設栽培が行われており、スーパーなどでも販売されています。


【研究を実施しています】

現在、3種のシメジの菌を施設で増殖し、増殖した「菌床」を山に埋めて、自然味に溢れたキノコを安定的に発生させる研究を実施しています。

ホンシメジとシャカシメジはアカマツ・コナラ林に菌床を埋めて樹木への共生を期待しながらキノコを発生させようとしています。ホンシメジは、この方法によって若干のキノコ発生が見られたことを岐阜県の林業601号で紹介しました。現在は、再現性を確認するため、八百津町有林や高山市有林などのアカマツ・広葉樹林に試験地を設置して調査を進めています。シャカシメジはこれまで発生事例がないため、ホンシメジの技術を参考にしてキノコが発生させられないかと試験を始めています。

ハタケシメジは、樹木に共生しないので菌床を埋める際に周囲の樹木の種類は気にしなくて良いと考えられます。そこで、郡上市有林や森林文化アカデミー演習林などのスギ林に菌床を埋設して調査を行っています。キノコの発生は確認できていますが、安定生産に向けた取り組みを進めています。

ホンシメジとシャカシメジの試験地(八百津町有林) 埋設した菌床から発生したハタケシメジ(郡上市有林)
ホンシメジとシャカシメジの試験地(八百津町有林) 埋設した菌床から発生したハタケシメジ(郡上市有林)