岐阜県に自生するサルナシNo.1株を探して

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



サルナシは山地に自生している落葉性つる植物です。キウイフルーツと同じマタタビ科に属し、表面にキウイフルーツのような毛がなく、わずかな酸味と甘みがありブドウのように一口で食べることができる小粒の果実です。しかし、食べ過ぎるとパイナップルを食べ過ぎた時のように口の中に刺激が残る欠点があります。この刺激にはアクチニジンと呼ばれる酵素(森林のたよりNo.628参照)やシュウ酸カルシウムが影響しているといわれています。そこで、アクチニジンの含量を指標として食感の良いサルナシを選定するために、アクチニジン高感度測定法を開発しました。

【おいしいサルナシの選定】

サルナシは、6月頃に白い花を咲かせ、秋に果実を実らせます。アクチニジン高感度測定法を使って、当研究所の苗畑で植栽しているサルナシの果実を材料にアクチニジン含量を測ってみました。果実は、8月初めの未熟な果実から、10月末の熟れて甘くなる果実まで、一定期間ごとに収穫しました。その結果、当研究所にあるサルナシの果実は、未熟な果実にはアクチニジンがほとんど含まれておらず、果実が熟れて甘くなり、適食時期になるにつれて、アクチニジン含量も増加することがわかってきました。

現在、岐阜県内各地に自生するサルナシの果実を収集し、適食時期にアクチニジン含量が少なく、生食に適していると考えられる果実を実らせる株を探しています。まだアクチニジン含量の少ない果実は見つけられていませんが、これまでの調査で岐阜県内から、形の異なる果実(写真)を実らせる株が見つかってきています。

サルナシ果実の比較
サルナシ果実の比較

【タンパク質分解酵素としてのアクチニジン利用】

自生株を探す中で、アクチニジン含量の高い株にも利用価値があることがわかってきました。刺激に関連する悪役として説明してきましたアクチニジンは、タンパク質を分解する働きがある酵素のグループに分類されています。タンパク質を分解する酵素は、タンパク質のかたまりである食肉を柔らかくする働きがあるので、唐揚げ粉に混ぜることで肉を軟らかくする効果を発揮します。また洗濯洗剤に混ぜることでタンパク質汚れを分解することに役立ち産業界でも注目される酵素です。サルナシ果実の内でアクチンジンを造り出す遺伝子(設計図)を調べてみると、キウイフルーツに含まれているアクチニジンとかなり似ていることがわかってきました。これまでに調べられているキウイフルーツのタンパク質分解酵素と異なる働きを持っている可能性もあります。サルナシやキウイフルーツの細胞を工業的に培養しアクチニジンを大量に生産することも夢ではありません。