おいしいサルナシづくりをめざして
(岐阜県森林科学研究所)上辻久敏
森林のたより 2006年1月号掲載
サルナシは山地に自生している落葉性つる植物でやや湿り気のある場所を好みます。キウイフルーツと同じマタタビ科に属し、キウイフルーツを小振りにしたような果実をつけます(森林のたより 2004(9) No.612 参照)。サルナシの果実はわずかな酸味と甘みがあり、ジャムやワインに加工されます。また、キウイフルーツやサルナシ果実はビタミンCを多く含んでいます。キウイフルーツはスーパーでよくみかけますが、サルナシをみかけることはほとんどありません。サルナシがあまり市場に流通していない理由として、雌雄異株で果実をつける木があまりみかけられないことや、食べた後、口の中にイガイガとした刺激を感じる食味も原因だと思われます。
サルナシの培養苗
サルナシの果実【イガイガの原因(タンパク質分解酵素アクチニジン)】
パイナップル果汁は、ブロメラインというタンパク質分解酵素を多く含んでいて、肉や大豆のタンパク質をアミノ酸に分解します。肉料理にパイナップルをいれるのは、肉質をやわらかくするための知恵といえます。パイナップルを食べ過ぎて、口が痛くなった経験はないでしょうか?これも、パイナップルに含まれているブロメラインが原因といわれています。
一方、キウイフルーツにも同様のタンパク質分解酵素が含まれており、キウイフルーツの属名 Actinidiaに由来して、アクチニジン(actinidin)と名付けられています。また、同様にサルナシにもアクチニジンが存在することがわかっています。サルナシのアクチニジン含有量は食味に影響する重要な要素であると考えられます。そこで、アクチニジン含量の少ないサルナシを山間地で栽培できるようにし、森林資源の幅広い利用を考えています。
【おいしいサルナシの選定】
アクチニジンの量が少ないサルナシ果実は、口当たりがよく食べやすく、おいしいのではないかと考えています。そのため、アクチニジン含有量を指標とした品種選定法について研究し、おいしく商品価値の高いサルナシの栽培をめざしていきます。この品種鑑定法はサルナシだけでなくマタタビ属果実の品種改良に役立つ可能性があります。また、アクチニジンの少ないサルナシから組織培養し、サルナシを効率よく増殖する方法についても研究を進めています。
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