(岐阜県森林研究所) 久田 善純
森林のたより 2023年7月号掲載
何年もかけて大切に育ててきた人工林が気象害などの災害を受けることは、林業経営にとって大きな痛手です。森林研究所では、気象害の一つである冠雪害(着雪の重みによって幹折れや倒木が起きる被害)の危険度が高い地域をマップ化し、当所のホームページで公開しています(※1)
針葉樹人工林では、形状比(樹高÷胸高直径)の値が高い"ひょろ長"の林木は冠雪害を受ける可能性が高くなります。よって、危険度の高い地域内では適期の間伐により幹回りの成長を確保し、がっしりした健全な林分を仕立てるよう心掛けることがとても重要です(スギの場合、形状比70程度が目標)。
既に形状比が高めになっている林分に対しては、優先的に間伐を行うよう計画することが望ましいです。ただし、間伐が過度に遅れた林分では、すぐに形状比を下げることは難しく、かえって危険な林相になる場合があるので、弱度の間伐を繰り返しながら徐々に健全な林分に誘導する配慮も必要です。
前述のマップは、気象的なリスクを約1kmメッシュ単位で表示したものです。大まかなエリアを示しているだけなので、間伐の優先度を計画するためには、そのエリア内における危険度の高い林分を具体的に絞り込む必要があります。
そこで、絞り込む手段として、航空レーザ測量データの解析により県が作成した「密度の高い林分の情報(森林疎密度解析の成果)」を用いました。密度が高い林分では形状比が高くなっている可能性があるからです。
冠雪害はスギで発生する事例が多いため、密度が高い林分としてスギの「密」、「過密」(※2)の林分情報を用意し、気象的リスクの情報と組み合わせることにより、図1のように「冠雪害危険林分」を試行的に区分しました。
現在、それらの林分を抽出して図示した資料を、県下全域について順次作成しているところです(図2)。
図1 密度が高い林分の情報と気象的リスク情報の組み合わせによる 冠雪害危険林分 (危険度1,危険度2)の区分 |
図2 冠雪害危険林分の提示資料の例 |
冠雪害危険林分を図示した資料については、大判紙へ印刷する体裁のほか、GIS上で閲覧できるようシェイプファイルとして提供することを計画しています。図1の危険度ランクの分け方については、利用者の希望に応じて設定を変えることもできます。
現時点では市町村への提供を予定しています。また、森林経営計画をたてる事業体の方へ提供することも検討しておりますので、関心のある方は森林研究所または農林事務所へご相談ください。
※1:「ぎふ森林情報WebMAP」(https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/shiyou/sinrinwebmap.html)
→森林管理のための情報地図→レイヤーリスト中の「冠雪害危険度」にて閲覧することができます(ただし4段階表示版として公開)。図の詳細についてはぎふ森林研情報No.90(https://www.forest.rd.pref.gifu.lg.jp/rd/kankyou/mj9003.pdf)を参照してください。
※2:森林疎密度解析において、「過密」は相対幹距比14%未満かつ樹冠疎密度80%以上の林分、「密」は相対幹距比17%未満の林分のうち「過密」を除く林分を指します。