森林研究所は桜の名所!?

(岐阜県森林研究所) 渡邉 仁志



【はじめに】

先ごろ、各務原市が日本一の桜回廊づくりをはじめると報道されました。市内をぐるりと計39キロ、桜苑も整備して、桜都市を目指すようです。春が近づくと桜前線が気になったり、花が咲けばそれを愛でたりと、桜とわれわれ日本人の春とは切っても切れない関係にあります。

森林研究所には、県内ゆかりのサクラや園芸品種など約30種類が植栽されています。これらのサクラは、花の色、形などそれぞれに特徴があり、毎年三月〜四月にかけて次々と花開きます。ここではそのサクラたちの一部を紹介します(花の時期は美濃市を基準にしています)


【桜 さくら サクラ】

サクラはモモ、スモモ、アンズ、ウワミズザクラなどと近縁ですが、分類には諸説あります。最も狭義な説では、日本にある野生種は10種ほどです。古くからの品種育成の結果、それらから200種以上の園芸品種が生みだされ、保存されてきました。


【森林研究所のサクラ】

十月桜・寒緋桜  (ジュウガツザクラ・カンヒザクラ)
サクラはふつう春の花ですが、春を待たずに咲くのがこの二種類。十月桜は、名前のとおり十月〜翌四月に咲くサクラです。一度に咲く花が少なく花びらが細いので、花期と相まって儚げな印象を受けます。寒緋桜(写真)は三月早々に咲きます。派手な深紅の花とは裏腹に、半開きで下向き加減に咲く、控え目なサクラです。

普賢象  (フゲンゾウ・写真)
染井吉野が散った後、淡紅色で大きな八重の花を咲かせるサクラです。室町時代からある古い品種だといわれています。名前の由来は、花から突き出している、葉のように変化した二本の雌しべを、普賢菩薩が乗る象の鼻や牙に見たてたものです。

鬱金  (ウコン・写真)
数少ない淡黄緑色の花の品種。名前は、花がウコン(ターメリック)の根で染めた色に似ていることに由来します。散り際の花は紅色を帯びてきます。

揖斐二度桜  (イビニドザクラ・写真)
大野町にあるヤマザクラ(国指定天然記念物)。一本の木に一重と八重が咲き、八重咲の中に二段咲(花の外側にある八重咲の花びらがしぼむ頃、その花の中央にできたつぼみが開花する)が見られるのが特徴です。森林研究所では、一重咲の枝と二段咲の枝から増殖した個体を保存しています。現在、一重咲からの個体には一重と八重が混じり、二段咲からの個体には八重のみが咲いています。いつ二段咲が咲きはじめるかとても楽しみです。


寒緋桜 普賢象
寒緋桜

普賢象

鬱金 揖斐二度桜
鬱金

揖斐二度桜の八重咲き個体


岐阜県ゆかりのサクラでは、このほかに、臥竜桜(高山市飛騨一ノ宮)、淡墨桜(本巣市根尾)、荘川桜(高山市荘川町)の増殖個体がみられます。

森林研究所では、ホームページに「さくら」のページをつくり、構内のサクラを紹介しています。森林研究所は桜の隠れた名所です。春になったら、皆さんもぜひ見に来てください。