シイタケの変色を理解して、鮮度保持に役立てる

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



○シイタケの鮮度特性

岐阜県でのキノコ生産で最も生産量が多いシイタケにおいて、鮮度保持は重要な課題です。生シイタケの鮮度低下の特徴として、傘の裏側のヒダや柄の部分が茶色く変色する現象があげられます。この変色は、消費者や市場関係者の視覚的な評価に大きく影響します。市場関係者らは価格にも影響していると考えています。

当研究所では、シイタケの鮮度保持には、変色対策が重要と考え、シイタケの高品質化を目指し、シイタケの変色に影響する因子ついて調査しています。前回、シイタケ自身が変色に関与する酸化酵素をもち、シイタケの変色のしやすさが品種ごとに異なる可能性があることを紹介しました(森林のたよりNo.737,16ページ)。今回は、変色の抑制試験を行いましたので紹介します。


○酵素の働きにくい条件は?

シイタケの変色の根本的対策としては、変色に関係する酸化酵素の除去がありますが、現状では技術的に困難です。一方、酸化酵素が、働くためには、エネルギーとして酸素が必要です。シイタケの変色に関係する酵素への酸素の供給を妨げることができれば、酵素が働きにくい環境になり、結果としてシイタケが変色しにくくなる可能性が考えられます。


○変色の抑制試験

そこで、収穫したシイタケを袋に入れて、口を完全に密封したものと半分しか密封していないものとで、変色状況を比較しました。 半分しか密封していないものでは、3日目には、シイタケの柄が変色しました。一方、完全に密封したものでは、シイタケの柄の部分は、すべて白い状態を維持していました(図1)。

  
図1 収穫したシイタケを用いた試験
図1 収穫したシイタケを用いた試験

○実際の商品では?

シイタケの変色への影響がみられたことから、次は、実際に販売されているトレイにシイタケを並べラップした商品を用いて、試験をしました。ラップしてある商品をさらに先ほどシイタケの柄が変色しなかった袋に入れ、口を完全に密封したものと商品そのままの状態で保存したものを比較しました。その結果、今回試験した条件では、12日目にはラップだけの商品は、変色して黒くなりましたが、ラップした商品をさらに袋に入れ完全に密封したものでは、白い状態を維持していました(図2)。新たな袋に入れ完全に密封したものでは、内部の二酸化炭素を測定すると濃度が上昇し、酸素濃度が低下していました。シイタケの呼吸で酸素が消費され、二酸化炭素濃度が上昇したことで、結果的に酸化による変色が進みにくくなったのではないかと考えています。

市場では、出荷中に変色したシイタケは水分過多と呼ばれ、変色原因として、水分が注目されています。しかし、水分だけでなく酸素の供給もシイタケの変色に重要な対策箇所であると考えられます。

  
図2 パックした商品を用いた試験
図2 パックした商品を用いた試験