高品質化を目指しシイタケの変色特性を理解するために

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



変色を伴うシイタケの鮮度低下は目立つ

岐阜県で、シイタケはもっとも生産量の多いキノコです。このシイタケの鮮度保持は重要な課題です。鮮度低下の初期症状として傘の裏側のヒダや柄の部分が茶色く変色する現象があげられます。この変色は、消費者や市場関係者の視覚的な印象(評価)に大きく影響します。市場関係者らは価格にも影響していると考えています。

シイタケが茶色く変色する理由は、シイタケ自身が、キノコの中に茶色い変色物質を作ってしまうためです。変色物質はメラニンであると考えられています。この現象には、キノコ自身が持っている酸化酵素と呼ばれるものが、関係しています。キノコに限らず、包丁でカットしたリンゴが、少し時間がたつと茶色くなる現象にもリンゴ自身の酸化酵素が関係しています。

当研究所では、変色しにくい高品質なシイタケを生産することを目的に変色に影響する因子について調査しています。


変色しやすさは品種で異なる?

岐阜県で栽培されている数品種のシイタケの中で、品種Aと品種Bについて分析してみました。シイタケを収穫して、放置しておくと変色がはじまります。観察時間を短縮するためにキノコのヒダを含む傘部と柄部に分け粉砕して分析した結果、品種Aでは、傘部の変色の程度が高く、変色の程度が高いものほど検出される酸化酵素の量も高い結果でした。また、キノコ粉砕後の変色にpHが影響しました。一方、品種Aに比べて品種Bでは、傘部はほとんど変色せず検出される酵素量も少ない結果でした(図)。

収穫後の変色しやすさが品種によって異なる可能性があることがわかり、品種の選択に関して収量や形の特性だけでなく、変色のしやすさについても理解していくことが重要と考えられます。

  
シイタケの変色と酸化酵素量

栽培条件は変色に影響する?

発生したシイタケの変色に影響する栽培条件の探索も行っています。シイタケの栽培方法の1つで菌床を水に浸水して栽培する方法があります。この菌床を浸水している水(浸水処理水)に接触する位置から、発生しているシイタケで、変色しているものが認められました(写真)。

浸水処理水を分析してみると浸水処理水の中にも酸化酵素が検出されました。変色理由の1つとして浸水処理水に含まれる酸化酵素が関係している可能性があると考えています。

変色しにくい高品質なシイタケを栽培するために、発生したシイタケに散水の水をかけないなどの水の管理が重要とされていますが、変色に関して浸水処理水の付着も注意が必要なポイントとなりそうです。今後、「栽培中の浸水処理水にも注意する時期があるのか?」「品種による違いはあるか?」などについて調べ、変色しにくい高品質なシイタケを栽培するために役立つ情報を提供していきたいと考えています。



  
浸水処理水が付着したシイタケ柄の変色