(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏
森林のたより 2026年4月号掲載
近年、簡易なビニールハウスで栽培されているシイタケでは夏季の気温上昇が原因と考えられる発生量の低下が深刻化しています。簡易なハウスでは冬場の暖房設備は整備されている一方で、夏季の冷房設備は一部の限られた施設にしかありません。種菌会社が公表している栽培最適温度は実際の施設温度よりもかなり下にあり維持することは困難です。
簡易施設の生産者からは「シイタケの菌床が何度にどれだけの時間さらされると発生に影響するのか」という質問をたびたび受けます。この質問を解決するために、発生量に大きなダメージを与えるシイタケ菌床の温度上昇とその暴露時間を把握するための試験を行っています。
気温の高い夏場の管理の一つである袋カット時期に注目し、36℃以下で日単位の暴露時間の影響と41℃以上については分単位の暴露時間の影響を調べました。
培養後期の袋カット時期の菌床を21〜36℃で1〜5日暴露すると、33℃以上では温度と暴露時間の増加にともない発生開始が遅延しました。品種によって温度に対する耐性が異なる可能性もあることから、県内主要3品種を36℃で5日間暴露したところ、3品種中2品種は発生せず、残りの1品種も大きく減少しました。
袋カットから除袋直前の菌床を各温度で15分間暴露したところ36℃までは発生に変化はありませんでしたが、41℃以上で発生が大幅減少または停止しました(図1)。さらに41℃の暴露時間の影響を県内主要3品種で試験したところ、すべて15〜60分以内の暴露時間で発生量が減少しました(図2)。この結果、短時間でも41℃を超えると初期の発生機構に致命的ダメージの可能性があることが判明しました。
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県内のシイタケ生産組合から依頼があり、夏場の袋カット前に組合役員、JA、種菌会社、当研究所が、連携して全生産者の施設の状況把握と改善点の抽出を行いました。赤外線サーモグラフィーで調査したところ、
天井付近・側壁付近・棚上段が特に高温になっている施設が多数存在しました。施設によっては、シイタケが発生せず、菌床の配置をとりやめている箇所があり、測定すると41℃を超えていました。生産組合は調査結果を活用し、市の事業で断熱対策の補助を受け、断熱資材を用いた高温対策に取り組んでいます。
また、冷却設備を導入した施設でも、高い外気温の影響等で室内環境が不均一になっている事例があり、改善に取り組んでいます。当所ではキノコ生産会社と連携して、室内環境の均一化にむけた改善と増収試験を行うことで、生産量の増加に成功している事例もあります。生産者の方でお困りごとがあればいつでもご相談ください。