災害に強い森林作業用道路の適地を見える化!
〜路網整備難易度推定図を公開しています〜

(岐阜県森林研究所) 臼田 寿生

森林のたより 2025年5月号掲載



はじめに

森林整備を効率的に進めるためには、森林内の路網(森林内の各種道路)の整備が必要です。しかし、森林内の路網整備には地形改変を伴うことから、急傾斜地などの地形条件の厳しい場所では、斜面崩壊や土石流などの山地災害を引き起こす恐れがあります。特に森林内の路網のうち、森林作業のために整備される「林業専用道」および「森林作業道」は、切土と盛土による土構造の作設が基本であることから、作設に適した場所が限定されることに留意し、路網整備を進めることが重要です。
  そこで当所では、災害に強い土構造の路網整備に適した場所をわかりやすくするための路網整備難易度推定図を作成しました。

路網整備難易度推定図の特徴

路網整備難易度推定図は、崩壊が発生しにくい路網を整備する上での難易度を示した地図です。ここでは、この図の凡例に示されているそれぞれの範囲について説明します。

    
路線整備難易度推定図
路線整備難易度推定図

「到達可能範囲」は、県が定める林業専用道および森林作業道の作設指針等に基づいた道路構造(幅員、切土・盛土の高さ、縦断勾配など)を満たす作設が可能かつ既設一般道との接続が可能と推定した範囲であるため、災害に強い路網整備に適していると考えられます。ただし、谷などの水が集まりやすい場所では、「到達可能範囲」であっても豪雨時には路網が被災しやすくなります。このため、特に水が集まりやすいと考えられる集水面積1ha以上の水系線もあわせて表示しています。
  「作設困難範囲」は、作設指針等に基づいた道路構造を満たす作設が困難と推定した範囲であるため、路網整備による崩壊発生リスクが高いと考えられます。
  「到達困難な作設可能範囲」は、作設指針等に基づいた道路構造を満たす作設が可能ではあるものの、既設一般道までの間が作設困難と推定した範囲です。このため、現状では、この範囲までの土構造による路網整備は困難と推察されますが、将来、一般道などがこの範囲まで延伸された場合には「到達可能範囲」と同等の範囲として利用できる可能性があります。

路網整備難易度推定図の活用方法

災害に強い路網整備の適地を選定する際には、「路網整備難易度推定図」を参照し、できる限り「到達可能範囲」で整備を進めることで崩壊発生リスクを抑えることができます。 また、災害に強い路網整備を進める上では、万が一の土砂流出に備えて周辺の家屋等の保全対象への影響も考慮することが重要です。 特に道路の崩壊にともなって土石流が発生した場合には、甚大な被害につながる恐れがあることにも留意が必要です。
  森林のたより848号では、土石流が発生した際の家屋等の建物が被災するリスクの評価を支援する地図として、当所が作成した「土石流災害リスク評価支援図」をご紹介しました。
  災害に強い路網整備の適地を選定する際には「路網整備難易度推定図」による崩壊発生リスクの確認に加えて、「土石流災害リスク評価支援図」を参照し、建物までの距離が十分に確保されているなど保全対象の被災リスクが低い場所であることを確認することも重要です。
  なお、ご紹介した地図は、過去に取得した地形データなどの限られた情報から作成したものであるため、必ず最新の現地状況も確認した上で、最終的な判断を行ってください。

おわりに

「路網整備難易度推定図」および「土石流災害リスク評価支援図」は県内全域分を作成し、これらの地図の活用方法の解説書とともに当所のウェブサイトで公開していますので、災害に強い路網整備のためにぜひご活用ください。



    
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