岐阜県森林研究所の研究について

(岐阜県森林研究所) 中通 実

森林のたより 2025年1月号掲載



はじめに

森林研究所は、美濃市内のある県立森林文化アカデミーの東に位置しており、林業・木材産業界の方々と連携しながら、健全で豊かな森林づくりと林業及び木材産業の振興を推進するための研究開発に取り組んでいます。研究内容や成果については毎月本コーナーで情報発信していますが、今回は当所の令和6年度に開始した研究課題を紹介します。

令和6年度に開始した研究課題

  【森林づくりの推進に関する研究】

@地域特性や用途に応じた再造林技術の構築 (研究期間:R6〜R10)
  成長の早いコンテナ苗を用いた低コスト再造林の実行適地の検討、地域に適した早生樹の探索、樹種や地域に合った獣害対策資材の検討やその維持管理への対応、コンテナ苗等の成林状況の評価や成林後の低コスト管理技術の開発を行い、これらの技術を組み合わせて多様なニーズに応じた低コストかつ確実性の高い初期保育技術を開発します。

A採種園等における種子採取開始日の見直しに向けた調査委託事業(R6〜R8)
  近年、夏季の高温等のため種子の成熟時期が早まっている可能性があります。また、球果の採取時期が種子の成熟時期を過ぎてからとなった場合、充実した種子を採取し損ねてしまう可能性があります。そこで、本県の主要造林樹種であるヒノキについて、種子の成熟時期を明らかにします。

B日本と木材輸出相手国の樹木を外来病害虫から護る複合リスク緩和手法(キクイムシ等への対策)の開発(R6〜R10)
  スギ・ヒノキの植栽〜製材の各段階での病害虫被害低減技術を開発し、より環境負荷の低い木材輸出措置を構築します。外来害虫の侵入経緯を明らかにし、今後の病害虫侵入リスク低減のための方策を提言します。

 

C現場で使える山地災害リスク評価手法の研究 (R6〜R8)
  CS立体図など既存の各種地図データに加え、地盤の風化度や湿性植物など現場の情報を組み合わせ、従来よりも簡便で精度の高い、山地災害リスクの評価手法を構築します。

    
写真1 ヒノキコンテナ苗 写真2 キクイムシの穿孔被害
写真1 ヒノキコンテナ苗 写真2 キクイムシの穿孔被害

  【林業・木材産業の振興に関する研究】

D紫外光を利用したキノコバエ類防除技術の実用化 (R6〜R8)
  シイタケ生産において問題となっているキノコバエ類を防除するために、青色光を使った防除技術を開発し、実用化を図ります。

E高級菌根性きのこ栽培に関する技術開発 (R6〜R15)
  林地でのトリュフ発生の再現性を確認し、短期間で安定的に発生させる技術開発を進めるとともに、トリュフ研究の知見を活かして、マツタケの林地でのシロ拡大を目指した技術開発を行います。

    
写真3 発生した黒トリュフ
写真3 発生した黒トリュフ

これまでの研究成果の技術移転について

これまでに配布している技術指針等の成果物や研究成果報告、研究紹介など多くの技術情報をHPで公開していますので、ぜひご覧ください。また、ぎふ森林情報WebMAPのページでは、CS立体図などの地図が表示できます。

 

おわりに

今回紹介した課題等について興味を持たれましたら、森林研究所までお問合せていただければ幸いです。また、当所では、研究業務のほか、随時、皆様からの試験依頼や各種相談にも対応し、県民や業界に寄り添った研究所として活動しています。森林管理や森林資源の活用などの相談だけでなく、疑問に感じたことなど、お気軽にご質問ご意見をいただきますようお願いします。