締固める機械によって盛土の硬さは変わるのか(2)
〜機械質量の異なる2種類のバックホウでの比較〜

(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏

森林のたより 2024年3月号掲載



はじめに

切土や盛土などの「土構造」を基本とする森林作業道では、崩れにくい路体にするため、盛土を締固めて硬くすることが重要です。
  岐阜県森林作業道作設指針(以下、指針とする)において、締固め作業1工程分(以下、1層とする)の厚さは0.3m程度とされています。
  森林のたより第813号(2021年6月)では、締固める機械をバケット容量山積0.09m3の小型バックホウとバケット容量山積0.28m3の標準バックホウの2種類で比較した結果から、小型バックホウで締固める場合、1層の敷均し厚さは0.3mでは十分な締固めが出来ていないことを紹介しました。
  今回は、機械質量の異なる2種類の標準バックホウで締固めを行い、盛土の硬さの比較を行いました。

試験方法

試験は、平坦な地盤を掘り下げて作成した溝(深さ約0.9m、幅約0.6m、長さ約3.0m)に土を敷均して、それを締固める作業を森林作業道の盛土の締固め作業と想定して実施しました。また、1層の厚さは0.9m程度のものと0.3m程度のもの(図―1)の2種類としました。敷均しには、溝から掘り取った土砂(礫質土)を使用し、締固めはバックホウのバケット部を用いて5回ずつ行いました。
  盛土を締固める機械には、機械質量約7.8t、バケット容量山積0.28m3の標準バックホウ(以下、0.28m3BH)と、機械質量約13.4t、バケット容量山積0.45m3の標準バックホウ(以下、0.45m3BH)を使用しました。
  盛土の硬さは、簡易貫入試験により求めたNd値(※)で評価しました。
  簡易貫入試験は、図―1の地面付近まで締固めたのち、地面から深さ0.9m程度までの土層を対象として行いました。なお、簡易貫入試験の回数は、締固め条件ごとに試験位置を変えて、3回実施しました。

※Nd値:質量5kgのハンマ(おもり)を50pの高さから自由落下させたとき、貫入コーンを約10cm貫入させるのに要した打撃回数を求めたもの

    
図1 試験の模式図
図1 試験の模式図
(1層の厚さを0.3m程度で締固めの例)

試験結果

過去の調査において、盛土崩壊発生箇所はNd値5未満である場合が多いことが報告されています。そこで、締固め機械ごとのNd値5以上の割合を1層の厚さ別に算出し、図―2に示しました。
  1層の厚さが0.9mの場合は、Nd値が5以上の検出割合が0.28m3BHで約22%、0.45m3BHで約42%であったのに対し、1層の厚さが0.3mの場合は、0.28m3BH、0.45m3BHのどちらで締固めた場合でも、Nd値が5以上の検出割合が8割以上となりました。

    
図2 締固め機械ごとのNd値5以上の検出割合
図2 締固め機械ごとのNd値5以上の検出割合

おわりに

今回の試験により、機械質量の異なる0.28m3BHと0.45m3BHどちらについても、1層の敷均し厚さは、0.3m程度ごとに締固めることが重要であることを再確認しました。
  盛土の崩壊発生リスクを下げるためには、硬い盛土を作設することが重要です。硬い盛土を作設するために、指針で示された作設方法に基づき、安定した基盤の上に0.3m程度ごとに締固めを行うことが必要です。