外側に高強度材を配置した接着重ね材の曲げ強度性能

(岐阜県森林研究所) 田中 健斗

森林のたより 2024年1月号掲載



はじめに

森林のたより819号にて、輸入材や集成材横架材と同等の強度性能を持ち、安定供給可能な横架材製品の開発を目指し、接着重ね材(以下、重ね材)に関する研究を行っていること、強度が同程度のヒノキ心去り正角を3本重ねて接着した重ね材の曲げ強度試験を行った結果を紹介しました。
  材料の強度はそれぞればらつきがあるため、強度が同程度の3本の組み合わせを行えず、余ってしまう材料が発生することが考えられます。今回は、低強度材を内側に配置し、強い力がかかる重ね材の外側に高強度材を配置したものについて曲げ強度試験を行ったので、その結果の一例を紹介します。

外側に高強度材を配置した重ね材の試作

最終寸法120mm×360mm×6,000mmの3段接着重ね材を試作にあたって、まず、県内の製材工場にて、岐阜県産6m丸太から約140o角の心去り正角を2本製材し、木材乾燥機で中温乾燥を行いました。次に乾燥終了後、非破壊で動的ヤング係数(たわみにくさの指標の一つ)を測定し、JAS基準に従い等級分けを行い、内側の材料よりも等級が2段階上の材料を両外側に配置した3本の接着組み合わせを決定しました。(写真1)その後、幅125o、厚さ123oに切削したのち、県内の集成材工場にて木材用接着剤を用いて接着し、最終寸法に仕上げました。

    
写真1 心去り正角3段接着重ね材
写真1 心去り正角3段接着重ね材
赤色が高強度材

曲げ試験の結果

曲げ試験を実施した試作品の曲げヤング係数と曲げ強さの関係を図1に示します。曲げ強さ(材料の壊れにくさ)および曲げヤング係数(材料のたわみにくさ)はどちらもJAS基準を満たし、規格上問題のないものを作成することができました。
  同一等級構成の重ね材の時と同様、構成材料の動的ヤング係数が高いほど、重ね材の曲げヤング係数も高い傾向にありました。また、無垢材と同様、曲げヤング係数が高いほど、最大荷重から算出した曲げ強さが高くなる傾向が見られました。
  破壊性状については、主に構成材料に存在する節から破壊しており、接着層を起点として破壊したものはありませんでした。

    
図1 外側に高強度材を配置した試作品の強度性能の関係
図1 外側に高強度材を配置した試作品の強度性能の関係

おわりに

今回実施した外側に高強度材を配置した重ね材についても、JAS基準を満たすものを製造することができ、より必要とされる強度に対してきめ細やかに対応できると予想されます。外側に高強度材を配置したタイプの試験は、試験体数が少ないため、さらに試作品を作成し、強度試験を行い、強度性能の信頼性を高めることで、県内での接着重ね材製造に関する知見を蓄積していきたいと考えています。