(岐阜県森林研究所) 水谷 和人
森林のたより 2023年11月号掲載
トリュフは、世界三大珍味で知られる高級食材で、ブナ科樹木などに共生して菌根を作る地下性のキノコです(図1)。ヨーロッパなどでは一部の黒トリュフで感染苗木による人工栽培が行われています。我が国にもトリュフが自生しますが、国内で採取されたトリュフの栽培は行われていません。
そこで、簡易な方法で短期間に国産トリュフの人工栽培化を図るため、黒トリュフを接種した大きなコナラ苗木を苗畑に植栽しました。
ここでは、植栽後七年目のコナラの状況について紹介します。
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図1 黒トリュフ |
平成二十八年四月と七月に、市販の二年生コナラ苗木(苗高約八十cm)の根を、国内で採取した黒トリュフの胞子懸濁液に浸漬した後、苗畑に設置した石灰施与区と無施与区に各十四本植栽しました。
植栽後四年目の結果は、森林のたより806号に紹介しましたが、黒トリュフの菌根は石灰施与区にのみ形成しました(表1)。根にはトリュフ以外の菌根も混在しましたが、栽培化への第一歩となる菌根形成に成功しました。
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表1 コナラの黒トリュフ菌根形成 |
植栽後七年目のコナラは、大きなもので樹高6mを超えました(図2)。七年目の令和五年八月に石灰施与区で、直径約五cm、深さ二十cmの穴を各一ヶ所掘って土壌を採取し、その中に存在するコナラの根を顕微鏡で観察しました。
石灰施与区の四月及び七月植栽には、いずれも黒トリュフの菌根が形成していました(表1)。採取した土壌内のコナラの根はトリュフの菌根で占められ(図3)、それ以外の菌根がほとんど見られなかったことから、石灰施与区のコナラにはトリュフの菌根が安定して増加していることがわかりました。
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図2 植栽7年目のコナラ | 図3 トリュフ菌根の形成状況 |
棍棒状の根がトリュフの菌根 |