作業道における横断排水処理を確実に行うための留意点
〜冊子「壊れにくい道づくりのための森林作業道作設の手引き」改訂版より〜

(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏

森林のたより 2023年6月号掲載



はじめに

森林作業道は、間伐をはじめとする森林整備、木材の集積・搬出のため継続的に用いられる道であり、地形に沿うことで作設費用を抑えつつ、繰り返しの使用に耐える丈夫で簡易なものであることが必要です。これを踏まえ、「岐阜県森林作業道作設指針」では、路体は堅固な土構造によることを基本としています。
  しかし、岐阜県内の森林は30度以上の急傾斜地や脆弱な地盤など森林作業道の作設が困難な場所も多く存在します。このため、当所では丈夫で簡易な森林作業道を作設する上で考慮すべき内容をまとめた冊子「壊れにくい道づくりための森林作業道作設の手引き」を2017年度に作成し、県内の林業事業体等に広く利用していただいています。
  その後の当所の研究により、壊れにくい森林作業道作設のためには、土構造を基本としながらも構造物の設置を検討すべきケースがあることや、横断排水施設での確実な排水のために必要な数値基準等が明らかになりました。これらの研究成果を取りまとめ、冊子「壊れにくい道づくりのための森林作業道作設の手引き」を改訂しました。
  今回は、改訂した内容のうち、土構造の横断排水処理における確実な排水のための留意点を紹介します。

土構造の横断排水処理の留意点

路面に凹凸部分を形成する土構造の横断排水施設の最適な規格を検討するため、既設の森林作業道において、図1のとおり、縦断勾配(度)、集水区間距離(m)、排水施設高低差(p)、越流(路面水が排水施設を乗り越えて下流へ流れること)の有無等を確認しました。その結果、岐阜県森林作業道作設指針において基本とされている平均縦断勾配10度以下の箇所については、集水区間距離が40m以下では集水区間距離に比例した排水施設高低差以上の排水施設では、越流が見られませんでした(図2)。
  この結果から、縦断勾配10度以下の土構造の横断排水施設について、集水区間距離に応じた排水施設作設方法(案)を提示しました(図3)。ただし、排水施設高低差の最大値25pは、作設方法によっては車両の通行に支障が生じる恐れがあるため、基準となる排水施設高低差のすりつけ区間を長めにとる工法も合わせて提案しています。

    
図1 土構造の横断排水施設における調査項目の模式図 図2 土構造の横断排水施設における排水施設高低差(最小値)、集水区間距離と越流の有無の関係 図3 縦断勾配10度以下での集水区間距離に応じた排水施設作設方法(案)
図1 土構造の横断排水施設における調査項目の模式図 図2 土構造の横断排水施設における排水施設高低差(最小値)、集水区間距離と越流の有無の関係 図3 縦断勾配10度以下での集水区間距離に応じた排水施設作設方法(案)
 

おわりに

このたび改訂した冊子は、壊れにくい道づくりのために必要な情報を簡潔に示してあります。当所のホームページから無償でダウンロードできますので、ぜひ入手してご活用下さい。