ぎふ森林情報WebMAPを活用して山地災害リスクを把握する

(岐阜県森林研究所) 臼田 寿生

森林のたより 2023年4月号掲載



はじめに

近年、気候変動の影響による大雨が増加傾向にあり、斜面崩壊などの山地災害の発生リスクが高まっています。
  そこで、当所では、山地災害リスクをわかりやすく示すための地図情報の整備を進めており、その成果を当所ウェブサイト内の「ぎふ森林情報WebMAP」で公開しています。
  今回は、その具体的な活用方法について、平成30年に県内で発生した斜面崩壊の事例を取り上げながら解説します。

斜面崩壊が発生しやすい場所の特徴(崩壊3条件)

当所が県内の斜面崩壊発生箇所で行った調査結果(森林のたより第794号参照)や文献などから、山地における斜面崩壊は、次の3つの条件が重なる場所で発生しやすいと考えられます。
  @急傾斜地(特に30度以上)
  斜面崩壊は林地の傾斜角度が25度以上の場所で発生することが多く、30度以上では特に発生しやすくなります。
  A地盤が風化し、土層が厚い場所
  断層運動等により地盤の風化が進行し、土層が厚くなった場所では、崩壊が発生しやすくなります。また、風化が進行し、土層がさらに厚くなった場所では、土塊がゆっくりと移動する地すべりが発生することもあります。
  B水が集まりやすい場所
  地表面がへこんだ凹地形および断層運動により地盤が破砕された箇所など地下水が集まりやすい場所では、大雨の際に土層に含まれる水分量が著しく増加し、崩壊が発生しやすくなります。

 

県内で発生した斜面崩壊の事例

それでは、平成30年7月豪雨の際に県内で斜面崩壊が発生した場所をぎふ森林情報WebMAPで確認してみましょう。図1は林地の傾斜角度を色で示す「傾斜区分図」です。崩壊地の傾斜角度は35〜40度であり、崩壊が発生しやすい条件であったことが確認できます。(崩壊条件@)

  
図1 崩壊地付近の傾斜区分図(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)
図1 崩壊地付近の傾斜区分図(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)

図2は崩壊地の場所に断層の位置を示す線と地すべり地形を重ねたものです。崩壊地は断層に近接しているとともに地すべり地形内の末端に位置していることから、地盤がもろく、土層が厚くなっていた可能性があることがわかります。(崩壊条件A)

  
図2 崩壊地付近の断層と地すべり地形(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)
図2 崩壊地付近の断層と地すべり地形(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)

図3はCS立体図という地形図で、凸地形は赤色、凹地形は青色で表現されています。崩壊地の範囲内の色は、青色で表現されている部分があり、豪雨時に水が集まりやすい凹地形であることがわかります。(崩壊条件B)

  
図3 崩壊地付近のCS立体図(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)
図3 崩壊地付近のCS立体図(ぎふ森林情報WebMAPの地図から作成)

このように斜面崩壊が発生した場所では、地図情報から崩壊が起こりやすい場所の3条件を確認できる事例が多くみられます。

おわりに

山地災害による被害を減らすためには、ぎふ森林情報WebMAPの情報などから山地災害が発生しやすい場所をあらかじめ把握し、大雨に備えた対策を実行することが重要です。また、災害リスクが高い場所では、道の作設のような地形改変や樹木根系による斜面崩壊防止機能を大きく低下させる皆伐は極力回避するといった配慮も必要です。

ぎふ森林情報WebMAPでは、今回紹介した地図以外にも森林管理などに役立つ地図情報がご覧いただけますので、ぜひご活用ください。