(岐阜県森林研究所) 上辻久敏
森林のたより 2023年3月号掲載
近年気温が上昇し、夏場には40℃を超える気温が観測されるようになってきており、様々な農作物への影響が危惧されています。
岐阜県でのキノコの主要生産品目であるシイタケは、外気温の影響を受けやすいビニールハウスにおいて栽培されており、その多くは冬場の対策である暖房施設はありますが、夏場の空調対策は行っていないのが現状です。
夏場の気温上昇が原因と考えられる栽培トラブル(シイタケ発生量の低下)の発生から、各生産施設では、夏場に何らかの対策が必要なことは理解されていますが、現状では夏場の栽培管理方法が確立されておらず、対策は各生産者の経験任せとなっています。生産者からは、夏場に発生する栽培トラブルの原因の究明と有効な対策が求められています。
夏場の栽培トラブルの原因が温度上昇と仮定し、培養後期の発生処理前の菌床を用いて、人工的に温度を変化させ発生への影響を確認しました。発生処理前に36、33、30、27、24および21℃で処理した結果30℃以上で発生に影響がありました。次に、36、33、30および必ず発生する21℃で、処理時間(5、1日)の影響を確認しました(図1)。その結果、33℃以上で5日処理した場合と36℃で1日処理した場合で、発生開始が遅くなる傾向がありました(図1)。
その後の菌床から発生するシイタケを調べたところ、33℃で5日処理した場合と36℃で1日処理した場合では発生時期が遅くなりましたがシイタケは発生しました。しかし、36℃で5日間処理した場合は、シイタケは発生しませんでした。各温度の条件下で温度だけでなく処理時間がシイタケの発生を決める重要な因子であることが分かりました。
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図1 処理温度と日数の影響 |
赤外線サーモグラフィーカメラを用いてシイタケ栽培ビニールハウス内全体の温度分布を調査しています。ビニールハウスの天井や側壁面は、特に暑く、菌床表面にも部分的に赤色で示された30から36℃の場所が存在します(図2)。特に5段の栽培棚の上段に配置されているビニールハウス側壁側の菌床表面の温度が高くなっており注意が必要であることが分かりました。
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図2 施設内温度分布の様子 |
温度とその継続時間のシイタケ発生への影響を明らかにして、栽培施設の熱だまりの状況を理解しつつ、効果的な対策を考え、キノコ生産者の収益向上に貢献していきたいと考えております。