コウヨウザンの利用に向けて

(岐阜県森林研究所) 土肥基生

森林のたより 2023年2月号掲載



はじめに

コウヨウザンは、成長の早い早生樹と言われることから、スギやヒノキに変わる植栽樹種として期待されていますが、材として利用する際の強度特性や加工性については分からないことが多いのが現状です。今回、岐阜県森林技術開発・普及コンソーシアムの協力により、郡上市西和良で伐採されたコウヨウザン材の試験を行うことができましたので、その結果の一部を紹介します。

丸太のヤング係数

胸高直径62cmの1本を伐採し、約3m毎に造材し、6番玉までの丸太(末口直径51cm〜18cm)を得ることができました。これらの丸太のヤング係数を測定したところ、7.1〜8.1KN/mm2の範囲にあり、ヒノキ丸太(概ね9〜13 KN/mm2)と比べて低く、スギ(概ね6〜9 KN/mm2)と同等程度でした。この結果からは比較的たわみ易い(軟らかい)材だと言えますが、強度については樹種毎にヤング係数との関係が異なるため、今後、別途試験を行う必要があります。

製材面の外見上の特徴

6本の丸太のうち元玉から家具用材を想定した柾目板29枚を製材し、材面を観察したところ、スギやヒノキには現れない休眠芽の組織が点状に出現しました(写真1)。この組織は、年輪の中心の髄から樹皮側に放射状に広がっており、製材面が放射方向と平行になった場合は、線状に現れました(写真2)。また、乾燥後の製材面には不規則にヤニの滲出が見られました(写真3)。玉切りした直後の丸太木口面の形成層付近(樹皮の裏側)からも、白色のヤニが滲出していました(写真4)。


写真1 休眠芽   写真2 休眠芽(平行面) 写真3 材面のヤニ 写真4 木口からのヤニ     
写真1 休眠芽 写真2 休眠芽(平行面) 写真3 材面のヤニ 写真4 木口からのヤニ
 

乾燥性について

約50〜60℃の温度で人工乾燥を行い、含水率を10%程度に仕上げた際の含水率経過を図1に示します。コウヨウザンのサンプル材の初期含水率は最大で100%程度でしたが、同時に乾燥させたスギ柾目板と比べて、乾燥速度は大きくは違わないことから、特に乾燥が難しいとは言えない結果でした。また、乾燥に伴う厚さ方向、幅方向の収縮もスギと同程度の結果であり、乾燥後の大きな曲がりや反りの発生も確認されませんでした。


図1 コウヨウザンとスギの乾燥経過
図1 コウヨウザンとスギの乾燥経過

今後に向けて

今回は、あくまで「柾目板」の製材を行った結果であり、木材としての利用を検討する上では、もう少し断面の大きな構造用の正角材などに加工し、乾燥性や強度性能などを詳しく調べていく必要があります。