地球温暖化が菌床シイタケ栽培に及ぼす影響

(岐阜県森林研究所) 水谷和人

森林のたより 2023年1月号掲載



はじめに

地球全体の気温が上昇しています。令和4年には、岐阜市で最高気温が35度以上の「猛暑日」が20日ありました。近年、夏の暑さが厳しくなり、今後はさらに猛暑日が増えることが予測されています。キノコ栽培は温度の影響を受けやすいことから、安定した栽培を行うためには、夏の猛暑に対する影響の把握と適切な対策が必要不可欠です。

菌床シイタケ栽培

岐阜県内で行われている菌床シイタケ栽培(図1)の多くは、ビニールハウスなどの施設内で栽培棚に菌床を並べて培養からキノコの発生までを約1年かけて行います。空調機器を使用して温度を制御しないので、外気温の影響を強く受けます。また、ハウス栽培は露地栽培と比べて温度が上がりやすいこともあり、夏場の高い温度に注意が必要です。 実際、夏場の高温が原因と考えられる栽培トラブルも発生していることから、高温条件がシイタケの菌糸の伸長や発生に対する影響を調査しました。



図1 菌床シイタケ栽培
図1 菌床シイタケ栽培

高温が菌糸伸長に及ぼす影響

シイタケ北研705号を寒天培地上で、20度で7日間培養した後に35度に一定期間(1、3、7、14日間)置き、再び20度温度下に移動し、35度の高温条件が菌糸の伸長に与える影響を調べました(図2)。
  35度温度下では菌糸はほとんど伸長しませんが、20℃に移動すると再度伸長し始めました。しかし、伸長速度は高温条件前に比較すると非常に遅く、35度の日数が長いほど伸長が悪くなる傾向にありました。



図2 35度の高温条件と菌糸伸長
図2 35度の高温条件と菌糸伸長
 

高温が菌床に及ぼす影響

同様にシイタケ菌床に与える 影響を見るために、北研705号を35度に一定期間(0、1、3、7、14日間)置いた後、16度の温度下に移動して、シイタケの発生を調査しました(図3)。35度に0〜3日置いた菌床はキノコが発生しましたが、7日及び14日置くと、菌床が雑菌に汚染され、キノコは全く発生しませんでした。
  35℃の温度下に短期間でも置くと、シイタケの菌糸伸長やキノコの発生に悪影響を与えるため、夏場の気温が35度を超える日が多い昨今は、細心の注意が必要で、ハウス内の温度を上げない対策が必要不可欠です。この課題は生産者からの要望も高いため、引き続き調査を進めているところです。



図3 35度の高温条件とシイタケ菌床
図3 35度の高温条件とシイタケ菌床