森林作業道計画支援マップを作成しています

(岐阜県森林研究所) 臼田寿生

森林のたより 2022年6月号掲載



【はじめに】

丈夫で壊れにくい森林作業道の整備を進めるためには、作設に適した場所を的確に選定することが重要です。作設適地の重要な要素の一つに、作設する土地の傾斜角度が挙げられます。この傾斜角度については、当所のウェブサイト等で提供している「傾斜区分図」を参考に判別することが可能です。しかし、傾斜区分図では、作設する道の縦断勾配や切土高といった構造規格を満たすことができるかを確認することができません。
 このため、当所では、より効率的で精度の高い作設適地の選定を支援する森林作業道計画支援マップ(以下、支援マップ)の作成を進めています。

【支援マップの作成方法】

支援マップを作成するにあたっては、路網設計支援ソフト「FRD」(株式会社住友林業)と地形データ(1mメッシュの数値標高モデル)および当所が作成した既設路網データを使用しました。
 支援マップにおける作設適地は、県の作設指針を参考に設定した構造規格を満たす作設が可能であり、なおかつ、既設の公道(林道を含む)に接続している場所(到達可能地)と定義し、5mメッシュ単位で抽出しました。

【切土高の検討】

森林作業道の構造規格のうち、切土高については、県の作設指針において、「局所的に1.5mを超えざるを得ない場合を除き、切土法面の安定や機械の旋回を考慮し1.5m程度以内とすることが望ましく、なおかつ高い切土が連続しないよう注意する」と定められています。しかし、切土高の上限については定められていないことから、支援マップにおける切土高の上限値を比較検討するため、「2m以下」、「3m以下」、「5m以下」の3パターンでマップを作成しました(図1の右上、左下、右下)。なお、到達可能地については、道の縦断勾配の制限値を18%以下と25%以下に区分して表示しています
 切土高を変えた3つのマップの妥当性を検討するため、支援マップを作成した地域(地質:堆積岩)の既設森林作業道において、切土高と崩壊の有無を調査しました。その結果、切土高が高くなるほど崩壊の発生割合は高い傾向が見られました(図2)。
 次に、森林作業道の作設適地とされる35度以下の場所を到達可能地として作成したマップ(図1左上)と切土高が異なる3つの支援マップを比較したところ、2m以下が最も近似しており、3m以下も概ね近似していましたが、5m以下では、やや異なる場所も多く見られました。
 一方、支援マップの到達可能地の縦断勾配に着目すると、切土高2m以下よりも3m以下の方が緩い縦断勾配で到達可能な場所が多くみられ、路面侵食防止などの観点では、2m以下よりも3m以下の方が妥当である可能性も示唆されました。
 以上の結果を考慮すると、支援マップにおける切土高の設定は2m以下を基本として、地質等の現場条件を考慮しながら、3m以下も併用して検討することが適切であると考えられました。

   

図1 各種条件に基づいた森林作業道計画支援マップ
図1 各種条件に基づいた森林作業道計画支援マップ
 
図2 切土高と法面崩壊の有無の関係
図2 切土高と法面崩壊の有無の関係
   

【おわりに】

今回紹介した支援マップは、現在、県下の一部地域で作成中ですが、現場の皆さまのご意見を聞きながら、県内全域の作成を進めていきます。関心のある方は、ぜひお問い合わせください。