スギ心去り平角材の強度を考える(1)

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



はじめに

原木市場等に流通するスギ材の大径化が進んでおり、末口径40cm程度の丸太も珍しくありません。このような丸太からは、仕上がり寸法120mm×240mmの平角材を2丁取り(図1A)することが可能となり、今後は、心持ち平角材(図1B)に替わり、心去り平角材が増加することが予想されます。 しかし現状では、心去り平角材が殆ど使われておらず、強度等に対する不安があります。
  製材の強度に関する基準には、製材JASの等級ごとに定められた「基準強度」(表1)があり、住宅など建築物の構造計算等に使用されています。


図1 平角材の木取り 表1 JAS基準強度
図1 平角材の木取り 表1 JAS基準強度

貫通した節が多い心去り材

森林研究所では現在、この「基準強度」を満たしているか否かを確認するため、スギ心去り平角材の曲げ強度試験(図2)を実施しています。図3に示す2本の試験材は、ヤング係数による機械等級区分では共にE70に区分され、基準強度は29.4N/mm2です。しかし実際の曲げ強度試験の結果は、それぞれ、21.7N/mm2、21.6N/mm2となり、基準強度を大きく下回りました。 過度な高温乾燥を行い、内部割れが多く発生した場合に、基準強度を下回ることはありますが、今回は中温乾燥を行っており、内部割れもないため、乾燥方法が原因とは考えられません。両者に共通したことは、平角を立てた状態の下側に、材面を貫通する節が存在していることです。製材の長さ方向の繊維は、この貫通した節によって分断されており、 しかも節が「引張り」の力の加わる下側に位置したため、節を起点に折れるような形で破壊されていました。このような製材断面を貫通する節は、「心去り材」特有のものであり、髄の位置が製材断面の中心付近にある「心持ち材」では、あまり見かけることはありません。

 

図2 曲げ強度試験 図3 基準強度を下回った試験材
図2 曲げ強度試験 図3 基準強度を下回った試験材

おわりに

「心去り材」の全てで、このような強度低下をもたらす節が発生する訳ではありませんが、今回の試験では、基準強度に届かない材が散見されました。このような材の外観上の特徴(節の位置や大きさなど)が判れば、選別を行うことで、強度の高い材を得ることができます。 この選別を丸太の段階で行うことができれば、無駄な加工を減らすことにもつながります。今後も試験データを蓄積し、基準強度を満たすようなスギ心去り平角材の利用方法を検討していきたいと考えています。