ヒノキ心去り正角3段接着重ね材の強度試験の紹介

(岐阜県森林研究所) 田中 健斗



はじめに

森林のたより812号にて、輸入材や集成材横架材と同等の強度性能を持ち、安定供給可能な横架材製品の開発を目指し、接着重ね材に関する研究を行っていること、構成材料となるヒノキ心去り正角の製材方法による 強度性能比較を行ったことについて紹介しました。今回は、近県での製造事例がない、ヒノキ心去り正角3段接着重ね材(写真1)を試作し、曲げ強度曲げ強度試験を行ったので、結果の一例を紹介します。


写真1 心去り正角3段接着重ね材
写真1 心去り正角3段接着重ね材

接着重ね材試作品の概要

強度試験に使用した試作品は、県内の製材工場と集成材工場に製造委託したものです。岐阜県産6m丸太から心去り正角を2本、丸太の中心軸と平行に製材する「中心定規挽き」で製材し、木材乾燥機で中温乾燥を行いました。 乾燥終了後、非破壊で動的ヤング係数(たわみにくさの指標の一つ)を測定し、ヤング係数の近いもの同士となるように接着組み合わせを決定しました。その後、木材用接着剤を用いて接着し、最終寸法120mm×360mm×6,000mmに加工しました。

曲げ試験の結果

曲げ試験(写真2)を実施した試作品の曲げヤング係数と曲げ強さの関係を図1に示します。構成材料の動的ヤング係数が高いほど、重ね材の曲げヤング係数も高い傾向にありました。 また、無垢材と同様、曲げヤング係数が高いほど、最大荷重から算出した曲げ強さが高くなる傾向が見られました。
  曲げ強さは全ての材でJAS基準を十分に満たしました。しかし、曲げヤング係数については、一部の材でJAS基準を満たさないものが認められました。

 

写真2 曲げ試験の様子 図1 試作品の強度性能の関係
写真2 曲げ試験の様子 図1 試作品の強度性能の関係

おわりに

今回の試験では、節などの欠点から破壊されたことから、構成材料を選別することで、、JAS基準を満たす重ね材を製造することが可能であると考えています。
  今回実施した曲げ試験は、試験体数が少ないため、さらに試作品を作成し、強度試験を行い、強度性能の信頼性を高めるとともに、JAS基準を満たさなかった原因を究明し、解決策を明らかにすることで、県内での接着重ね材製造に関する知見を蓄積していきたいと考えています。