製材方法の違いによるヒノキ心去り正角の強度比較

(岐阜県森林研究所) 田中 健斗



はじめに

梁や桁などの横架材は、現状の国産材使用割合が1割に満たないことから、輸入材の製材や集成材と同等程度の強度性能を持ち、 安定供給可能な国産材料の開発が求められています。そこで森林研究所では、構造用製材を厚さ方向に積層接着した接着重ね材と呼ばれる材料について研究を行っています。


写真 接着重ね材
写真 接着重ね材

心去り正角を用いた接着重ね材

丸太の中心から約15年輪程度は未成熟材でありその外側に成熟材が存在しています。成熟材は未成熟材と比較すると材質が安定し、強度も高いのが特徴です(図1)。 最近は丸太の大径化により、心持ち1丁取り以外に、心去り2丁取りや4丁取りなどの製材方法がが可能になってきています。成熟材割合が高い心去り材は、 高強度の重ね材を製造するのに有利と考えられますが、同じ心去り材でも、繊維方向と平行に製材し繊維の目切れを少なくすることで、理論上はより強度の高い構成材料を得られると考えられます。
  そこで、2つの方法で心去り正角を製材し、その強度性能を比較しました。



図1 丸太の内部構造と製材方法
図1 丸太の内部構造と製材方法

製材方法別の強度性能

岐阜県産ヒノキ丸太(径級28〜34cm)を使用し、丸太の中心軸と平行に製材する「中心定規挽き」、丸太側面と平行に製材する「側面定規挽き」で製材し、人工乾燥ののち120×120mmに加工し、曲げ試験を実施しました。
 その結果、たわみにくさの指標である曲げヤング係数と破壊に至るまでにかかる荷重から算出した曲げ強さの間には相関が見られましたが、製材方法の違いによる強度性能の差は見られませんでした。(図2)
 このように製材方法による強度性能の差が出なかった理由としては、供試した丸太の元口と末口の径の差が小さかったために、中心定規挽きと側面定規挽きの違いによにより生じるはずの材面と繊維方向の角度の差が小さく、繊維の目切れによる影響がほとんど出なかったと考えられました。

図2 製材方法別の強度性能
図2 製材方法別の強度性能

おわりに

接着重ね材に必要な構成部材の製材条件を決定するため、中心定規挽きと側面定規挽きで心去り正角を製材し、曲げ強度性能を比較しました。しかし、今回の試験では強度性能に差は見られないことが明らかになりました。
 今後は、さらに大径のヒノキ丸太や元口と末口の差が大きな丸太を用いた同様の試験を行い、強度性能に差がみられるのか検証を行っていきたいと考えています。