キノコの生産量を高め、品質よく出荷し、さらに機能性という付加価値をつけるために

(岐阜県森林研究所) 上辻 久敏



はじめに

岐阜県森林研究所はキノコの生産額を少しでも増加させるために、増収技術、品質保持技術および機能性をキーワードとする新しい技術で、 県内キノコ生産業の発展を多角的にサポートすることを目的に技術開発を進めています。今回は、その中の品質を保持する技術について紹介します。

キノコの品質を保持する技術

生シイタケが出荷後に変色する事例が、全国の産地で問題となっています。変色しやすいのはシイタケの特徴でもあり、その原因は水分過多と考えられ、水分管理が重要視されてきました。
 水分も変色の重要な因子なのですが、水分以外の因子についても研究を進めたところ、シイタケの変色には、酸化という反応が関係していると考えられました。ただの酸化ではなく、シイタケ自身が持つ酸化を促進する酵素が反応を進めていると考えられました。
 品質保持試験を進める中で、シイタケの呼吸が活発であることが分かりました。そこで、酸素透過性の低い袋でシイタケを密封し、シイタケの活発な呼吸を利用して袋内の酸素を消費させ、酸素濃度が低い状態を作り出すことに成功しました。  この酸素濃度を低下させる密封処理を行って保存することで、シイタケの変色を抑制することができました(写真)。
 試験当初は、袋内の酸素濃度が低くなることが酵素の反応に必要な酸素の不足につながり、結果としてシイタケの酸化酵素の働きが阻害されて変色が抑制されると考えていました。

写真 密封処理による変色抑制の様子
写真 密封処理による変色抑制の様子

このメカニズムを解明するため、シイタケの酸化酵素の活性(働きの量)を高感度で測定する条件を用いて、密封処理を行ったシイタケと無処理で変色が進行するシイタケの酸化酵素活性の変動を比較することができました。
 その結果、シイタケに含まれる酸化酵素の活性は収穫後一定ではなく、変色が進行するにつれてシイタケの酸化酵素の活性が高まることが分かりました。一方、密封処理により変色が抑制されたシイタケでは、酸化酵素の活性が収穫時のシイタケよりも低下していました。
 この結果から、密封処理でシイタケ自身が酸化しにくい状態に変化したものと考えられます。

本研究により、密封処理を行うことでシイタケの酸化酵素の活性が弱まることが初めて明らかになり、これが変色を抑制するメカニズムのカギになると考えられます。