大径材の乾燥を低コストで
-心去り平角材を天然乾燥と人工乾燥の組み合わせで乾燥させる-

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



はじめに

県内の人工林では長伐期化が進んでおり、市場に流通する原木が大径化しつつあります。そのため、製材工場では従来と異なる「木取り」で製材を行うケースが増えると想定されます。例えば平角材(120mm×240mm)の場合、直径30pの原木なら「心持ち」木取りで1丁の平角を採ることになりますが、直径38pでは心去り平角の2丁取りができます。(図1)
  心去り材の乾燥については、心持ち材と比べ比較的割れにくい性質があるため、高温乾燥(*1)を行わなくてもよいと考えられます。しかし、平角のような断面の大きな部材を中温乾燥(*2)させるには20日程度の日数が必要となり、乾燥コストが問題となります。
  今回は、心去り平角材の天然乾燥と人工乾燥の組み合わせによる低コスト化を念頭に置いた乾燥法について紹介します。

(*1)120℃程度の人工乾燥
 (*2)60〜90℃程度の人工乾燥

図1 平角の2丁取り
図1 平角の2丁取り

人工乾燥と天然乾燥の組み合わせ

天然乾燥では自然のエネルギーを利用して乾燥を促進させるため、コストを下げられる利点があります。断面の小さな間柱等の小割材では、比較的乾燥速度が速く、天然乾燥だけで仕上げることも行われていますが、断面の大きな平角材では、JAS規格などに定める含水率(例えば20%)まで乾かすには非常に長い期間を要します。そのため、仕上げの段階で人工乾燥を組み合わせるのが効果的です。

試験事例の紹介

当初で行ったスギ材の乾燥試験の結果を図2に示します。天然乾燥は平成3年5月から10月にかけて実施し、その後人工乾燥(中温での減圧乾燥)を行った際の8本の平角材の含水率の経過を、折れ線グラフで示しています。天然乾燥の初期には含水率が急激に低下し、その後、徐々に乾燥速度は落ちてゆきます。含水率がおおむね30%となった時点で人工乾燥(中温での減圧乾燥)に切り替え、4〜5日程度で20%以下の含水率に仕上げています。
  この事例では、人工乾燥工程で、減圧乾燥を行っていますが、勿論、通常の蒸気式の乾燥機にも適用できます。この場合、所要日数は2倍程度(8〜10日程度)になると思われますが、それでも平角を生材から乾かす(20日程度)のと比べれば短期間での処理となります。
  また、この方法には「高温乾燥と比べて内部割れの発生が少ない」という利点があります。天然乾燥中の愛面の表面割れをできるだけ少なくすれば、内部、外部ともに割れの少ない材に仕上げることができます。

図2 心去り平角材の含水率の経過
図2 心去り平角材の含水率の経過

おわりに

スギの心去り平角材の利用は、現在のところ一般的ではなく、この利用を広めるには乾燥方法の他に、製材段階で発生する曲がりへの対応や、強度面での不安を払しょくする必要があります。森林研究所では、今後もこれらの課題を順次解決していきたいと考えていますので、ぜひご意見をお寄せください。