梁材用途に適したスギ原木を選んで価値を上げよう

(岐阜県森林研究所) 富田 守泰



はじめに

原木の強度に対するグレーティング(等級区分)は、製材と同様にJAS規格で定められていますが、選別した各強度を必要とする別業種が複数無いため、運用された実績はほとんどありません。ところが、最近では構造材のほか合板利用など複数用途になってきたことで現実味を帯びてきました。 また、測定機器の小型化が進み、土場や市場での利用も可能になってきました。そこであらためて原木段階で製品の強度グレーディングを予測することの効果を金額ベースまで算出して確認しました。

試験方法

対象は,東濃地域産、末口径24〜36cmの4m材スギ162本、47.2 m3です。最初に、椪積状態のまま叩いて振動周波数を測定し、クレーンで重量を測定して末口径から密度を別途求め、原木のヤング係数を算出しました。次に、すべての原木を4寸の平角材に製材して乾燥後、現地の強度等級機器を用いて仕上げ前製品のヤング係数を求めました。

地元の等級区分製材工場が知りたい、導入の判断基準として必要な情報

高強度の梁材を得ることがグレーディングの目的とすると、原木選別現場の作業性を考慮するならば、原木のJAS規格にあるようないくつものランク分けをするよりも、閾値を設定して高強度材を二区分で選別するのが現実的です。

原木ヤング係数順に並び替えたシートと活用法

原木市場では、閾値以上の原木を選択します。そして、原木を製材工場で製材・乾燥し、製品を強度等級別(E〇〇)に選別して比率を出します(図1)。必要なのは、設定した閾値によって、製品の等級別比率と選択した原木本数比率がどれだけになるかを把握することです。図2では、原木をヤング係数順に並び替えて横軸とし、製品を等級の高い順に積み上げた「製品比率」と累積した「原木本数比率」を縦軸に示したものです。この図を用いて、製品価格から原木選択に使える経費を算出しました。
 まず、横軸のすべての原木に対し製品の等級別比率を縦軸で拾います。すべてを製材して乾燥した場合(図の左端)、7.5割がE90以上になります。
 通常の平角製品価格(m3)を60,000円とし、E90以上の価格を70,000円として試算するとa式のとおりとなります。E90以上の製品を9割確保しようとすれば、8.7GPa以上の原木選択が必要となり、b式のとおり前者に比べて製品m3あたり1,500円の価値向上になります。本試験では主製品の歩留まりは3.4割であり、図2の原木本数比率が6割になることから、選別による全原木の価値向上はc式と図3のとおり306円/全原木m3になります。

 

図1 原木のヤング係数で並び替え、閾値で選択された製品比率(例) 図2 椪積状態のヤング係数と製品比率の試験結果 図3 閾値と原木あたり価値上昇
図1 原木のヤング係数で並び替え、 図2 椪積状態のヤング係数と製品比率の試験結果 図3 閾値と原木あたり価値上昇
閾値で選択された製品比率(例) 0.25×60,000+0.75×70,000=67,500円 a式
0.1×60,000+0.9×70,000=69,000円 b式
1,500円/製品m3×0.34製品m3/原木m3×
0.6原木m3/全原木m3=306円/全原木m3 c式
 

実用化のポイントは移動する前後でのシステム化

原木を移動する作業と同時に重量と末口径を測定する方がメリットは大きいです。国の研究所ではハーベスタを用いて伐採木の強度を判断し、長尺材として玉切りする研究が進められていますが、安価なグラップルならばもっと実用化が進みそうです。この並び替え手法が簡易な選別装置導入の判断基準として利用されることを期待します。