森林作業道における路体損壊箇所と構造物設置箇所の実態について

(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏



はじめに

森林作業道は、間伐をはじめとする森林整備、木材の集積・搬出のため継続的に用いられる道です。地形に沿って開設することで作設費用を抑えつつ、繰り返しの使用に耐える丈夫で簡易なものであることが求められます。これを踏まえ、森林作業道作設指針では、路体は堅固な土構造によることを基本としています。しかし、急傾斜地においては、かご枠などの簡易な構造物を設置しなければ、損壊が起こりやすくなるため、継続的な利用が困難となります。
  過去の森林のたより(第759号、第764号)で、急傾斜地での森林作業道崩壊について報告しましたが、今回は斜面傾斜と路体損壊箇所や簡易構造物設置箇所との関係性について、既設の森林作業道で調査した事例を報告します。

調査路線および調査内容

調査路線は、平成24年度に作設された森林作業道(全幅員3.6m、延長1,786m)です(図1)。現地の地質は砂岩泥岩互層(5万分の1地質図幅より)です。
  調査内容は、簡易構造物(鋼製L型擁壁工)設置箇所の位置、路体損壊箇所の位置、路体損壊の種類(崩壊・クラック)、道下斜面傾斜度(図2)などです。

図1 調査箇所の傾斜区分図 図2 森林作業道横断図
図1 調査箇所の傾斜区分図 図2 森林作業道横断図

調査結果

路体損壊(崩壊・クラック)箇所の道下の斜面傾斜度はすべて35度以上でした(図3)。また、鋼製L型擁壁工はすべて道下斜面傾斜35度以上の箇所に設置されており、構造物設置箇所での路体の損壊は認められませんでした(図3)。
  以上の結果から、この事例では、道下の斜面傾斜度が35度以上の箇所では構造物を設置しなければ、路体が不安定となりえることが確認できました。
  なお、当該箇所と地質などの条件が異なる場所では、結果が異なることが予想されるため、今後もほかの路線で同じ調査をすすめていきます。

  
図3 道下斜面傾斜分布
図3 道下斜面傾斜分布

おわりに

急傾斜地では、構造物を設置しなければ、路体が不安定となり得ることから、損壊が発生しにくい丈夫な森林作業道を作設するには、できる限り急傾斜地を避けた線形とすることが必要です。
  森林研究所では、急傾斜地を判読しやすい傾斜区分図等を作成し、Webサイト「G空間情報センター」上に公開しています。また、この公開した「岐阜県傾斜区分図」等は、WebGIS「ひなたGIS」にも掲載されており、通信可能な場所であれば、スマートフォンなどで現在位置を確認しながら見ることができます。
  ぜひこれらの図面を活用していただき、丈夫な道づくりの推進をしていただきますようお願いいたします。