(岐阜県森林研究所) 水谷 和人
森林のたより 2018年10月号掲載
トリュフは、世界三大珍味の一つにも数えられる高級食材です。海外では石灰岩地帯のアルカリ土壌を好むとされ、ブナ科樹木などの根に菌糸を共生させて菌根を作る菌根菌です。近年、国内で黒トリュフも白トリュフも自生することがわかってきました(図1)。 現在、国産トリュフの栽培化を目指して、野外に生育するクヌギやコナラなどの成木の根系にトリュフ菌を接種して新たに菌根を形成させる研究を実施しています。今年は、接種源として国産トリュフの感染苗木を作成し、クヌギやコナラ林に植栽を行ったので、その内容について紹介します。
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図1 国産の黒トリュフ |
接種源となる感染苗木は、コナラの実生苗木に、国産トリュフの胞子や培養菌糸、発生地の土壌などを接種して作っています。確実に作成できる条件は明らかではありませんが、黒トリュフも白トリュフも感染苗木が少しできました。 クヌギやコナラ林に感染苗木を植栽して、トリュフの菌根を形成させるためには、第一にクヌギやコナラの成木の細根を増やすことが重要です。トリュフ菌が感染して菌根を作るのは直径2mm以下の細根だからです。
クヌギやコナラの成木の細根を増やす条件について検討した結果、クヌギなどの成木の細根生産は、根を切断する断根処理を7月よりも3月や5月の春に行うと増加する傾向にありました(図2)。 また、トリュフ菌が好むとされる高pH環境が細根生産に及ぼす影響も調査しました。石灰施与の効果はばらつきが大きいですが、細根生産量が増加する場合もあり、細根の増加に悪い影響は与えない結果でした。
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図2 断根時期と石灰施与がクヌギの細根生産量に及ぼす影響(石灰施与は1.9kg/m2、平均+標準誤差、 供試数7) |
これらの結果を受けて、クヌギやコナラ林で3〜5月に断根処理を行い、石灰を散布して国産トリュフの感染苗木を植栽しました(図3)。現在、50本程度を植栽していますが、今年の秋には成木にうまく感染して、菌根ができるかどうかを確認する予定です。 菌根が確認できれば、栽培化に一歩近づきます。成木にトリュフの菌が感染してもキノコが発生するまでには時間がかかるかもしれませんが、シイタケ原木生産を行う場所で国産トリュフ生産もできればと考えています。
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図3 クヌギ林に植栽した感染苗木 |