崩壊危険地がわかりやすい地図を道づくりに活用する(その3)〜CS立体図から見えてくる崩壊危険地〜

(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏



【はじめに】

森林内で壊れにくい道を作るためには、事前に崩壊危険地を見つけ、それを避ける技術が必要です。崩壊危険地がわかりやすい地図は、本誌759号と768号で紹介しましたが、今回は759号で紹介した「CS立体図」から見えてくる崩壊危険地のうち「断層」と「地すべり地形」を紹介します。

【断層】

県内には、活断層として公開されているもの以外に、過去にずれた断層が数多く存在します。断層は、地層や岩盤に力がかかり、割れてこすれ合いながら移動した状態であり、断層線の周囲はもろくなっています。岩の部分ともろくなって風化した部分の境界線は、水の通り道となり、崩壊が発生しやすいです。 このように、もろくなっている断層線上には、直線状の谷が形成されます。CS立体図では谷線が青く着色されるため、断層による谷が判別しやすく表現されます (図1)。

     
図1 断層の判読例
  
図1 断層の判読例

【地すべり地形】

森林内には、地すべり地形と呼ばれる箇所が、数多く存在し、現状では動きが止まっている箇所もあります。これらを、地すべり地形と気づかず、脚部を掘削したり、頭部に土を盛ったりすると再びすべり出し、大きな崩壊につながる可能性があります(図2)。 地すべり地形は、地形図の等高線だけでは見つけにくいですが、CS立体図を利用すると、視覚的に判別しやすくなります。地形図では谷線が馬てい形(馬のひづめ状)に表現されますが、CS立体図では移動体(地すべりとして移動するかたまり)も含めて、よりわかりやすく表現されます(図3)。

図2 地すべり地形でやってはいけない施業
図2 地すべり地形でやってはいけない施業
図3 CS立体図を利用した地すべり地形の判読例
図3 CS立体図を利用した地すべり地形の判読例

【おわりに】

CS立体図からは、今回紹介した他にも様々な情報が視覚的に判別できます。こういったわかりやすい地図を活用し、道づくりに活かすことで、災害を減らす「減災」は可能です。

現在、森林研究所では、CS立体図の他にも崩壊危険地の判別に役立つ地図の作成や、壊れにくい道づくりのために注意すべきポイントを明らかにする研究に、取り組んでいます。 CS立体図等は森林研究所や各農林事務所で入手可能ですので、「壊れにくい道づくり」のために、ご活用していただければ幸いです。