シイタケの変色する仕組みを理解して、品質保持技術の開発に役立てる

(岐阜県森林研究所) 上辻久敏



シイタケの品質低下問題

岐阜県のキノコ総生産額約28億円の中でシイタケの生産額は約23億円(平成28年)あり、地域経済に貢献する重要な品目です。このシイタケに関して品質保持は重要な課題です。生シイタケの品質が低下し始めると、傘の裏側のヒダや柄の部分が茶色く変色します。この変色は、消費者や市場関係者の視覚的な評価に大きく影響し、市場関係者らは価格にも影響すると考えています。出荷後にシイタケが変色する事例は、全国のシイタケ産地で発生しています。


シイタケの酸化酵素に着目

当研究所では、シイタケの品質保持として、全国で発生している変色の対策技術を開発し、シイタケの商品力を高めることを目指しています。これまでの試験から、シイタケの変色のしやすさが品種ごとに異なり、シイタケ自身が持つ酸化酵素の働きの強さが、変色しやすさに影響している可能性が高いことが分かってきました。この知見をもとに酸化酵素の働きに影響する因子と変色の関係を調べています。

シイタケの酸化酵素が働くためには、酸素が必要です。そこで、密封し酸素の供給を減少させ酸化酵素の働きを抑制できる可能性があることから、シイタケの酸化酵素と変色させない品質保持および密封の関係について研究を進めています。これまでに、シイタケの主要な出荷形態であるラップ包装されたパック商品について、密封することでシイタケの変色を抑制することができる結果が得られてきています。


試験で保存条件を探索

シイタケの変色が出荷初期の初秋に多いとの意見があることから、保存温度を変化させ、比較的温度の高い20℃でも保存試験を行い、密封の効果を試験しました。14日目に通常のパック商品は変色しましたが、20℃でも密封により変色が抑制されることが分かりました(写真1)。

  
写真1 密封による20℃での品質保持効果(14日目)
写真1 密封による20℃での品質保持効果(14日目)
左が密封保存、右が無処理

より品質を保持できる密封条件を探索するため、性質の異なる袋を用いて密封と変色の関係についても試験を行っています。密封すればどんな袋でもよいというわけではなく、同じ密封でも袋の性質が、シイタケの変色に関する品質保持に大きく影響することが分かりました(写真2)。

  
写真2 密封する袋の性質による品質保持効果の違い
写真2 密封する袋の性質による品質保持効果の違い
各列ごとに袋の性質が異なる

初秋には、まだ気温が高いので、パック商品が梱包された段ボール箱を冷蔵の宅配便で出荷しています。冷蔵の場合1箱単位で冷蔵便の単価をかけて出荷する必要がありますが、常温便であれば、同じ段ボール箱を3個口で、発送することが可能です。品質保持条件で常温便の日数が1日でも増加することが、出荷にかかるコストの低下につながると考えています。