国内産トリュフの感染苗木を作成する

(岐阜県森林研究所) 水谷和人



○はじめに

トリュフは、世界三大珍味の一つにも数えられる高級食材です。トリュフには様々な種類があり、色や発生時期などに基づいて、黒トリュフ、白トリュフ、夏トリュフ、冬トリュフなどと呼ばれています。

ヨーロッパなどでは、栽培できるトリュフの種類は限られていますが、ブナ科樹木などの苗木に菌を感染させた感染苗木を植栽して、人工栽培が行われています。

一方、国内にも黒トリュフも白トリュフも自生することがわかってきましたが、我が国ではトリュフの栽培は行われていません。国内に発生するトリュフの栽培化に向けた検討が必要ですが、ヨーロッパのものとは種類や発生環境などが異なるため、海外の人工栽培技術をそのまま適用することはできません。

まずは、感染苗木の作成が必要です。感染苗木ができれば、トリュフ栽培に一歩近づくため、当研究所でも検討を進めています。まだ、確立された技術には至っていませんが、トリュフ感染苗木の作成の状況を紹介します。

◯感染苗木の作成状況

○感染苗木はできるか

接種源や培土などを変えて、様々な方法で感染苗木の作成を試みています。しかし、多くの苗木で感染は見られていません。

唯一、白トリュフであるホンセイヨウショウロを接種した一部の苗木で、根にトリュフ特有の形態を示す菌根が観察できました(写真2)。DNA解析の結果からも、菌根がホンセイヨウショウロであると確認できています。菌根が形成した苗木は、苗高約7.7cmで、1本当たりの菌根数は平均117個でした。

◯おわりに

現状では、多くの苗木が感染していないため、接種方法や管理方法について改良が必要です。ただ、数は少ないですが、作成できた感染苗木は野外に植栽して経過を観察したいと考えています。

本研究は、農林水産技術会議の委託プロジェクト研究「高級菌根性きのこ栽培技術の開発」で、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所などと共同で行っているものです。

トリュフが発生する場所などの情報があれば、ご連絡を頂けると幸いです。

  
写真1 苗木の育成状況 写真2 トリュフ菌が感染した根
写真1 苗木の育成状況 写真2 トリュフ菌が感染した根