崩壊危険地がわかりやすい地図を道づくりに活用する

(岐阜県森林研究所) 臼田寿生



【はじめに】

森林内で路網開設を進める際には、地形を的確に読み取り、その地形に適した道の規格や構造を選択することが重要です。とりわけ県内の民有林は、30度以上の急傾斜地が全体の約6割を占めるとともに、多くの活断層が集中していることから、地形判読を怠り、安易に道づくりをしてしまった場合には、山地災害を引き起こす恐れがあります。

このため、森林研究所では、地形判読を支援するための地図を作成し、その活用を推進しています。

今回は、それらの地図のうち、「傾斜区分図」と「CS立体図」の活用方法について紹介します。

【傾斜区分図】

傾斜区分図は、任意の傾斜区分ごとに色分けした地図です。傾斜角度が色により「見える化」されているため、自分の知りたい場所のおおよその傾斜を素早く確認することができます。

図1は傾斜区分図上に路網の崩壊箇所をプロットしたものです。崩壊箇所の多くは、30度以上の急傾斜地であることがわかります。さらに傾斜区分の境界に着目すると、上部の斜面よりも下部の斜面の傾斜が急な箇所の境界線である「遷急線(せんきゅうせん)」の下方で多くの崩壊が発生していることがわかります。遷急線は侵食前線とも呼ばれ、次の豪雨で崩壊が発生しやすい場所です。このため、遷急線に近い場所で路網を開設することは基本的に避けた方が賢明です。

また、遷急線とは逆に、上部の斜面よりも下部の斜面の傾斜が緩い箇所の境界線である「遷緩線(せんかんせん)」付近では湧水の発生が多くみられることから、路網を開設する際には湧水処理が必要となりますので注意しましょう。

  
図1.傾斜区分図上にプロットした路網における崩壊発生箇所
図1.傾斜区分図上にプロットした路網における崩壊発生箇所

【CS立体図】

CS立体図は、谷(凹)地形を青色、尾根(凸)地形を赤色で、さらに、傾斜角度に応じて、緩斜面を淡い色、急斜面を濃い色で塗り分け、直感的に地形を読み取りやすくした地図で、長野県林業総合センターにより開発されました。

CS立体図は、等高線の地形図よりも凹凸が直感的にわかるため、地すべり地形や断層などの危険地形が読み取りやすいことが特徴です。また、CS立体図上で青色と赤色が交互に集中している色の濃い場所は、地表面の侵食が進み、崩壊しやすい「侵食域」であり、このような場所も路網開設を避けた方が賢明です(図2)。

  
図2.CS立体図上の侵食域
図2.CS立体図上の侵食域

【おわりに】

「傾斜区分図」や「CS立体図」は、図上に現地の地形をわかりやすく表現したものですが、最終的には、現地調査等で得た様々な情報を踏まえて総合的に判断しなければ、現地に適した道づくりは実現できません。地図は現地調査を効率的に進めるための補助ツールとしてご活用ください。

なお、今回紹介した「傾斜区分図」と「CS立体図」の活用方法は、紙面の都合上、ごく一部の限られたものとなっているため、その他の活用方法や地図の具体的な入手方法などにつきましては、どうぞお気軽にお問い合わせください。