コンテナ苗は低コスト?(U)
−植栽後の初期成長が早いヒノキ・コンテナ苗を育成するには・・・−

(岐阜県森林研究所) 茂木 靖和



本誌731号において、コンテナ苗による低コスト再造林を実現するには、苗自身の低コスト化と植栽後の苗成長を高める必要があることを指摘しました。 あれから2年が経過し、植栽後の苗成長の検証が少し進みました。



1.植栽後のヒノキ・コンテナ苗成長の検証

4種類の育成条件(表1:ゼオライト無しで追肥の有無、ゼオライト混入で追肥の有無)により育てた2年生ヒノキ・コンテナ苗(写真1)を下呂市の国有林内に植栽(表2)し、植栽後のそれぞれの成長量(2成長期分)を検証しました。

表1 ヒノキ・コンテナ苗の育成方法 表2 コンテナ苗の植栽と成長量の検証

写真1 2年生ヒノキ・コンテナ苗(ゼオライト追肥有区)2014年2月26日撮影

2.検証結果

図1は、4種類のヒノキ・コンテナ苗と、同一日に近傍で植栽された2年生ヒノキ裸苗(普通苗)の1成長期目(2015年3月25日調査)と2成長期目(2015年12月10日調査)の成長量です。

図1 植栽後1成長期目と2成長期目の樹高および根元直径成長量

コンテナ苗では、1成長期目には樹高・根元直径成長量とも追肥有の試験区が、2成長期目には樹高成長量がゼオライトを混入した試験区で大きくなりました。今回検証対象とした育苗時の追肥は植栽後1成長期目の、鉢上げ時の培土へのゼオライト混入は植栽後2成長期目の苗成長を高めるのに効果がありそうです。

また、1成長期目と2成長期目合計の苗成長量は、追肥無区の樹高成長量を除き、裸苗よりコンテナ苗の方が大きくなりました。近年、コンテナ苗と裸苗の初期成長は変わらないという報告が増える中、今回の結果は、育成方法を吟味することで苗の初期成長を高めることができるというヒントを投げかけてくれているように感じます。

今後は、3成長期目以降の苗成長量を測定することで実際に下刈り期間短縮に繋がるほどの苗成長量を見込めるかを検証していきます。また、もう一つの課題「コンテナ苗自身のコストを下げる技術開発」に取り組み「コンテナ苗は低コスト!」を実現させたいと考えています。