トリュフの栽培化に向けて

(岐阜県森林研究所) 水谷和人



○トリュフとは

世界の三大キノコといえば、マツタケ、トリュフ、ポルチーニです。これらは、他のキノコに比較してけた違いに高価です。しかし、我が国ではマツタケが別格で、それ以外の注目度は少し低い気がします。

トリュフは、世界三大珍味の一つにも数えられ、「黒いダイヤ」と呼ばれる高級食材です。海外では石灰岩地帯のアルカリ土壌を好むとされ、ブナ科樹木などの根に菌糸を共生させて菌根を作る外生菌根菌です。大きさはゴルフボールからジャガイモほどですが、地中に発生します。このため、地上から見つけることは難しく、強烈な独特なにおいがあることから、豚に探させることでも有名です。

一口にトリュフと言っても様々な種類がありますが、食用で流通する種類は限られています。

◯我が国でも発生する

トリュフはヨーロッパや中国から、年間17t(約7億円)ほどが輸入されていますが、国内生産量は統計を見てもありません。

しかし、国内でもトリュフは見つかっています(写真1)。トリュフは表皮の色で大きく黒トリュフと白トリュフに分けられますが、黒も白も見つかっています。岐阜県内でも十年ほど前に「御嵩町で黒トリュフ見つかる。」と新聞報道されました。国内での発生場所は特に石灰岩地帯には限定されていません。ごく普通のナラ類やシデなどの林にも見られます。

  
写真1 国産の黒トリュフ(Tuber indicum)
写真1 国産の黒トリュフ(Tuber indicum

◯栽培化に向けて

ヨーロッパなどでは、感染苗木を使ったプランテーションが行われています。栽培できるトリュフの種類は限られますが、ブナ科樹木などの苗木に菌を感染させて植栽して栽培します。

一方、我が国では栽培が行われていません。それどころか、分類や発生地の情報など基礎的なこともはっきりわかっていません。国内にも食用として有望な黒トリュフが自生することが明らかになっているので、栽培化に向けた検討が必要です。

しかし、ヨーロッパのものとは種類や発生環境などが異なり、海外の人工栽培技術をそのまま適用することはできません。まずは、感染苗木の作成が必要です。感染苗木を作ることができれば、トリュフ栽培に一歩近づきます。


◯森林研でも研究を始めています

昨年度から、農林水産技術会議の委託プロジェクト研究「高級菌根性きのこ栽培技術の開発」で、(国立研)森林総合研究所などと共同で人工栽培技術の開発に向けた研究を始めています。

まだ、確立された技術には至っていませんが、菌根化した感染苗木もできてきています(写真2)。今後は、国産トリュフの感染苗木作成技術を確立するとともに、苗木を林地に植栽した後のトリュフの定着や増殖に適した肥培管理手法を開発する必要があります。

  
写真2 コナラ苗木に形成されたトリュフ菌根(写真 森林総合研究所)
写真2 コナラ苗木に形成されたトリュフ菌根(写真 森林総合研究所)

トリュフが発生する場所などの情報があれば、ご連絡を頂けると幸いです。