木材比重と含水率の関係を知るペットボトル模型とその理解

(岐阜県森林研究所) 富田守泰



理解し易さの研究

木材の研修をしていて、計算を伴う場合など、理解したという実感が得られていない場合が多くあります。そこで、木材中の水を例に、含水率や比重とどのように関わっているのかについて模型を使って理解度を測定してみました。

まずは基本

木材中の水は含水率で把握します。その値は、水の全くない(以下全乾)木材に対する水の比率を用います。含水率100%以上のこともあり得ることになります。

       含水率(%)=水分(g)/全乾木材(g)×100(%)

                       =(木材(g)−全乾木材(g))/全乾木材(g)×100(%)

一般化から生まれたペットボトル模型

木材は木材そのもの(これを実質と呼びます)と、多くの空洞から成り立っています。 これらの空洞を潰して固めるとその比重は針葉樹であれ、広葉樹であれ、個々の比重が異なっていても、ほぼ1.5になると言われています。

このように一般化すると下の写真の様な模型が考案されます。

500ccのペットボトルに比重1.5の物質(調整した砂糖カラメル)を、同じ体積の水分の無い木材重量になるまで入れます。 そこには空洞があり、その空洞に水が入ることになります。針葉樹、広葉樹を代表として2種類の模型を作成しました。

写真 針葉樹(スギ)と広葉樹(コナラ)のサンプル材とモデル化したペットボトル(実質部分の体積は全体1に対しスギ0.33/1.5=0.22,コナラ0.66/1.5=0.44とした)
写真 針葉樹(左:スギ)と広葉樹(右:コナラ)のサンプル材と、モデル化したペットボトル
(実質部分の体積は全体1に対しスギ0.33/1.5=0.22,コナラ0.66/1.5=0.44とした)

この模型で何が理解できるのか

スギの木は比較的軽い木の代表と考えられていますが、生木を持つと思いの外重く感じることがあります。 この模型を見れば、実質部分は少ないにもかかわらず空洞が多いことから、生木ではその空洞に入る水の多さが原因であることを推測させてくれます。

スギ生木の含水率は100%以上に対し、広葉樹ではせいぜい60%前後と言われています。 それは木材の実質が全体に占める割合が多いため、水分の入る空洞が少なく、さらに含水率は木材の乾燥重量に対する比率で示されるからと理解させてくれます。

つまり、水と木材実質を視覚的に分けて、体積と重量と比重の関係の理解が得られます。

理解度測定

専修学校生(19〜20歳)17〜19名に対し次の問題により理解度を測定しました。

問:4ton トラックにヒノキ原木を積載している。原木は末口自乗法にて測定し7m3であった。過積載か?

     ヒノキの比重(生材体積に対する乾燥重量)を0.4 とし、収縮による体積変化は考慮せず、含水率を60%として重量を算出せよ。

理解度測定結果

模型にて理解しない学生の正解率は5/19名=26%に対し、模型にて理解させた学生のそれは13/17名=76%に向上しました。

数式ではなく、模型で理解しそれを式で示すことで応用できることが分かりました。

モデル化への工夫

研究は現象を深く追求し、それを紐解くことにあります。 しかし研修などで理解してもらうための研究も重要で、まずは一般化する。そして一般化したものをモデル化することの必要性を痛感します。

(正解は4.48tonで、過積載)