スギ心材色を人工乾燥時の選別に利用する

(岐阜県森林研究所) 土肥 基生



岐阜県の民有林人工林蓄積のうち47%はスギが占めており、スギ材の利用拡大が求められています。スギ材を建築用構造材として使用する場合は、含水率を15〜20%程度まで下げた「乾燥材」とする必要があります。しかし、スギは生材の時の含水率のばらつきが大きいため「乾燥」が難しい材料と言えます。スギ材の人工乾燥で一般的に用いられる蒸気式では、同じ条件で乾燥した場合、含水率の高い(重い)材は仕上がり含水率も高く、含水率の低い(軽い)材は、仕上がり含水率が低くなってしまいます。この対策として、事前に選別を行うことで乾燥後の仕上がり含水率を揃える方法が有効です。既に、製材の重量を直接測る「重量選別」が実用化されていますが、大きな装置や手間を必要とするため、あまり普及していません。そこで、これに代わる簡便な選別方法として、スギの心材色を指標とする研究を行っています。


色の濃いスギは重い

スギの心材の色が黒い「黒心材」(写真1)は、水分量が多く重いことや、「赤心材」(写真2)は軽いことが経験的に判っています。木材の明度等を測定できる「色彩計」という装置を用いてスギの心材色と重量の関係を調査したところ、心材色と重量との間には、明度が高い(赤心)ほど軽く、明度が低い(黒い)ほど重い関係にありました。

写真1 明度が低く重い黒心材写真1 明度が低く重い黒心材 写真2 明度が高く軽い赤心材写真2 明度が高く軽い赤心材
写真1 明度が低く重い黒心材 写真2 明度が高く軽い赤心材

心材の色と乾燥性

実際に木材乾燥試験を行い、心材色と乾燥後の含水率の関係を検討しました。材料は、スギ正角材(135mm×135mm×3m:写真3)とし、一般的な高温乾燥スケジュール(120℃のドライングセットと90℃乾燥の組み合わせ)により乾燥試験を実施しました。
今回の試験材の仕上がり含水率は28.8%を平均に、9%から61%の範囲にバラつき、心材の明度が高いほど、乾燥後の仕上がり含水率が低く、乾燥性が良いという結果になりました。

写真3 スギの乾燥試験材
写真3 スギの乾燥試験材

重量選別と比べて

選別の効果を確認するために、乾燥前の明度により表1のようにグループ分けし、そのグループの中で乾燥後の含水率が25%以下となった材の割合を求めました。また、同じ試験材で重量によるグループ分けを行ったところ、表2の結果となり、心材色による選別と重量による選別でほぼ同じ結果が得られました。このことから心材色で乾燥前の選別を行うことは有効であると考えられました。

表1 明度による選別結果 表2 重量による選別結果
写真1 明度が低く重い黒心材 写真2 明度が高く軽い赤心材

今回の実験で測定した材色は、材を切った直後の色の値を使いましたが、材色は徐々に変化していく様子も観察されました。切ってから何日目までなら選別に用いることが有効であるか、色彩計を使わずに選別することは可能か、などの点について今後は詰めていく予定です。