(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏
森林のたより 2014年11月号掲載
本誌5月号(第728号)において、木製構造物の腐朽度を簡便かつ精度よく評価する方法として、マイナスドライバー(以下:ドライバー)を用いた方法を紹介させていただきました。その際に、ドライバーを「体重をかけて」木材に挿し込んだ場合と「腕の力だけで」挿し込んだ場合の比較を行い、体重をかけた場合の方が木材内部腐朽度測定機器であるピロディンと高い相関がみられたと報告しました。
では、どの程度の力をかければ、木材の腐朽度をより精度よく測定できるのでしょうか?
今回は、ドライバーにかかる力を計測し、その際の挿し込み深さと腐朽厚測定機器(レジストグラフ・ピロディン)により計測した値を比較してみました。
今回調査したのは、設置して約10年が経過したヒノキ材による治山ダムです。ドライバーによる腐朽厚の計測方法は、前回と同じく、ドライバーの先端のマイナスの線の方向を木材の繊維方向と平行な状態で、木材に挿し込み、ドライバーが止まったところまでの深さを計測しました。 ドライバーを挿し込む力の測定については、フォースゲージと呼ばれる荷重を計測する機器に、先端幅約3mmのマイナスドライバービットを取付け(写真1)、挿し込む際の荷重を計測しました。
このフォースゲージを用いて、3名の測定者が同じ位置で計測を行い、その荷重の差と挿入深さの関係を調べました。
また、同じ位置でレジストグラフ及びピロディンでも計測し、ドライバーとの相関を調べました。なお、レジストグラフの計測値は前回と同じく、最も表面に近い腐朽部分のみとしました。
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両手でフォースゲージ付ドライバーを保持した3名の測定者の平均挿入強さは152N,212N,256Nとばらつきがありましたが、レジストグラフ、ピロディンともに相関係数はいずれも0.59〜0.73と、比較的高い相関が得られました(図―1)。152Nは体重約50kgの男性が両手で機器を持って体重をかけて押し込んだ時の力であり、ドライバーが腐朽度測定機器として十分機能することが確認できました。
今後、多種多様な材でデータを積み重ね、マイナスドライバーによる腐朽度測定法を確立していきたいと考えています。
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