シイタケの鮮度を保つために

(岐阜県森林研究所) 水谷 和人



○シイタケの鮮度低下

冷蔵庫に保存しておいたシイタケが、見るも無残に茶色く変色してしまい、ゴミ箱に捨ててしまった経験はありませんか。生シイタケは青果物の中でも、鮮度が低下しやすい食材です。シイタケは鮮度が低下すると、特に傘の裏のヒダや柄が白色から茶色に変色します(図1)。また、腐敗によって組織の軟化や腐敗臭も生じます。


○変色と腐敗のメカニズム

変色は、シイタケに含まれるフェノール性物質が酸化酵素の作用によって褐色の色素であるメラニンができるからです。酸化酵素は酸素がないと作用しないため、密封した容器にシイタケをたくさん入れておけば、呼吸作用で酸素が少なくなり、変色しにくくなります。

一方、腐敗は、嫌気性のバクテリアなどが増殖し、組織の軟化や腐敗臭が生じることです。容器を密封して酸素が少ない場合は、シイタケ自身が呼吸できなくなり、腐敗が進んでしまいます。


○鮮度を保つ方法

鮮度を保つために、手軽で一般的な方法は、冷蔵庫などでの低温貯蔵です。酸化酵素の働きもバクテリアの増殖も低下します。

保管方法はもちろん大切です。しかし、それ以上に日持ちの良い商品価値の高いシイタケを栽培する技術の開発も重要です。シイタケの価格は下がっており、生産者サイドとしては、他産地に負けない競争力を強化する必要があるからです。特に、市場からのクレームとなる、変色した商品を減らす必要があります。産地ブランドイメージと価格に悪影響を及ぼすからです。日持ちに影響する要因はいろいろあると考えられますが、シイタケの含水率に着目して研究を進めています。

菌床栽培で発生した含水率の異なるシイタケを17℃で6日間保存して、傘の裏のヒダの変色状況を調べました(図2)。変色状況は色彩計を使って、色の明るさ(明度)を示すL値で客観的に判断しました。L値が小さいほど暗くなり、変色が進んでいることを示します。

調査の結果、ばらつきはありますが、含水率の高いシイタケはL値が小さく、変色しやすい傾向があり、日持ちが悪いと考えられました(図3)

現在は、この調査結果に基づいて、含水率の低いシイタケを作るための栽培方法について検討しています。

  
図1 シイタケの変色
  
図2 17℃で6日間保存した後のシイタケ
  
図3 シイタケの含水率と6日後のヒダの明度(L値)