コンテナ苗は低コスト?
ー低コスト化の実現に向けてー

(岐阜県森林研究所) 茂木 靖和



 近年、スギを中心に、コンテナ苗による再造林コスト削減への期待が高まっています。この技術は、植栽時期を春などに限定しないコンテナ苗を利用することで、植栽と木材搬出などの作業を連続して進めることを可能にし、作業全体の見直しにより再造林コストを削減するというものです。しかし、本県に多い急傾斜で起伏に富んだ場所での検証が不十分なことから、この技術が期待どおりコスト削減となるかは不明です。一方、苗の低コスト化と高品質化は、どのような植栽場所においても、再造林コストを削減します。

今回は、本県で造林面積が多いヒノキでの試験結果を基に、低コスト再造林を苗生産の視点から考えてみます。



1.コンテナ苗とは

現在、国内で最も流通している造林用のコンテナ苗は、マルチキャビィティコンテナと呼ばれるプラスチック製の容器で育成されたもので、従来の苗畑で育成された苗(従来苗とする)と比較して、根の部分が大きく異なります(図)。従来苗では、根の先が離れていますが、コンテナ苗では、根と培地が一体化し、型崩れしにくい円柱状の根鉢を形成しています。

コンテナ苗には、従来苗より、植栽後の苗枯死の減少と速やかな成長開始、植栽する時間が早いといった利点が指摘される一方で、苗単価が高い実情があります。

図 苗(ヒノキ)の比較


2.苗の低コスト化

苗単価を下げる有効な方法の一つに、生産期間の短縮があります。技術が成熟した従来苗では、現在、3年生苗が生産の主流です。過去には、コスト削減のため2年生苗の生産が検討された時期がありましたが、歩留りが低く本県では実用化されませんでした。

一方、コンテナ苗では、従来苗の3年生の苗長に2年で達するため、現在、2年生苗が生産の主流です。コンテナ苗は、従来苗のように植栽時期を春などに限定しないため、月単位でも生産期間の短縮によるコスト削減が可能です。本県では、苗長50cm程度のコンテナ苗が生産できていることから、苗長の目標を35cmとするならば、現状でも数ヶ月の生産期間を短縮できます。



3.苗の高品質化

従来苗では、主に長さと太さの規格により、苗の品質を保ってきました。生産者の目標は、規格に合った苗を生産することでした。

コンテナ苗では、根鉢が容易に崩れないなどの規格が新たに追加される一方で、長さと太さの規格が従来苗より引き下げられました。これにより、従来苗では規格外であった小型苗が、コンテナ苗では規格苗に認定される可能性が出てきました。この背景には、前述のコンテナ苗の利点から、小型苗でも植栽後の苗枯死の減少や速やかな成長開始が見込めるためと考えています。 

本県では、5月初旬の植栽時点の苗長が約27cmと47cmであった培地条件の異なるコンテナ苗が、7月下旬には苗長が約44cmと56cmに伸長し、その差が約20cmから12cmに縮まるケースがありました。また、この時、両培地条件の苗は、すべてが生存しました。この結果は、コンテナ苗の品質には、出荷時の規格だけでなく、植栽後の成長を考慮する必要があることを暗示していると考えています。



当所では、今年から5年計画でコンテナ苗を利用して再造林コストを削減する技術開発に着手しました。この課題では、今回紹介した苗生産に加え、植栽、初期保育の効率化と、各過程の体系化により再造林コストの削減を図ります。この間では、造林コストの約4割を占めるとされる初期保育の下刈りコストの削減が鍵になるとみています。前項で述べた植栽後の苗の成長は、早ければ下刈り期間が短縮され、コスト削減になります。

「コンテナ苗は低コスト」を実現するには、苗自身の低コスト化と植栽後の成長が早い高品質な苗の開発が必要と考えています。