皮付き丸太を利用した荒廃予防施設の経年変化

(岐阜県森林研究所) 和多田 友宏



はじめに

治山事業などの土木構造物での木材利用は、間伐材活用の有効な手段のひとつです。この構造物に利用される木材は、加工や選別が必要であることなどから、現状では専門業者等から購入されることが一般的です。現地で伐採した木材を簡単な加工のみで利用できれば、コスト面でさらに効果的です。しかし、現地調達した皮つき丸太を利用した構造物の経年変化については調査事例が少なく耐久性などで不明な点が多く残されています。

そこで今回は、施工から4年が経過した現地調達木材による構造物の経年変化について調査しましたので、その結果を紹介します。

調査対象

今回の調査対象は、平成20年度の治山事業により高山市一之宮町地内の渓流に施工された木製構造物です。この構造物は、「小さな渓流の軽微な浸食等を予防する」ことを目的とした荒廃予防施設(図―1)と呼ばれるもので、「人力により容易に施工できる構造」を基本とし、周辺の森林整備により発生したヒノキ伐採木(直径約15cm)を樹皮が付いたままの状態で利用しています。

  
図−1 荒廃予防施設(スリット型)標準図
図−1 荒廃予防施設(スリット型)標準図

土砂捕捉状況は?

平成24年7月に調査したところ荒廃予防施設には、上流から流れてきた土砂を捕捉し、渓流の荒廃を防止していることが確認できました。(写真―1)

  
写真−1 荒廃予防施設(スリット型)堆砂状況
写真−1 荒廃予防施設(スリット型)堆砂状況

部材の腐朽状況は?

 荒廃予防施設に利用されている木材の腐朽の程度を確認するため、レジストグラフ(穿孔機のキリの先端の抵抗から腐朽厚を計測する機器)を用いて調査した結果、杭木、横木とも腐朽の進行度は十パーセント未満でした。(図―2)。

 図―3は材の直径に対する健全部と腐朽部分の割合を表したものです。杭木、横木とも健全部が設計値を下回る部材はありません。

  
図−2 腐朽部分 調査結果   図−3 健全部と腐朽部分の割合  
図−2 腐朽部分 調査結果  

図−3 健全部と腐朽部分の割合  


今後の課題

今回の調査結果により、現地発生木材を利用した荒廃予防施設は、施工4年後において、上流から流れてきた土砂を捕捉するなど渓流の荒廃防止効果を十分に発揮していることがわかりました。また、使用された木材の腐朽についても、施工から4年が経過した現在でも健全部直径は全て設計値を上回っていました。  今後は、腐朽の進行度合いが渓流の安定化にどのような影響を及ぼすか、経過観察する必要があります。