県有特許の利用
メシマコブ、ホオ葉茶、プロセッサ

(岐阜県森林研究所) 水谷 嘉宏



森林研究所の研究成果は、関係の方々に自由に使っていただいて構わないものがほとんどです。しかし、一部には共同研究者の権利等を考慮して特許を出願・取得した技術があります。森林研究所が開発にかかわった3件の特許技術について紹介します。


【メシマコブ気中菌糸体の培養技術】

メシマコブは漢方生薬原料では桑黄と呼ばれ、桑の木に生える希少なキノコです。強い抗癌活性があることからサプリメントにも使用されています。  森林研が県内で採取した菌を用いて、気中菌糸体(キノコの前段階のもの)を培養する技術と菌糸に含まれる新規化合物について、健康補助食品等を扱うメーカーと共同で特許出願しています。この新規化合物には神経細胞を守る作用があり、アルツハイマー病予防薬などへの応用が期待されています。
 今のところ新規化合物を用いた医薬品や特定保健用食品などの開発に向けた具体的な計画はありません。培養技術についても菌糸体に対するニーズが不明なため使われていないのが現状であり、今後の展開には挑戦的な取り組みが求められます。



【ホオ葉茶の製造技術】

ホオノキもまた漢方で使われているほか、含有するホオノキオールやマグノロールには癌転移抑制作用があるとされています。  朴葉から茶葉を製造すると、通常の焙煎では苦み・えぐみが残りますが、有効成分を含有する一方で苦み等を抑える技術を製薬会社や製茶メーカーとともに開発し特許を取得しました。
 南飛騨国際健康保養地の農業生産法人(有)南ひだヘルスファームが山間地域の新たな特産品として商品化しています。多くの販売を期待しているところですが、巷にあふれる○○茶との競争もあり新顔の朴葉茶の売上げは低迷しています。  県下には朴葉寿司や朴葉味噌などホオ葉を使った食の文化がありますので、例えば観光施設との連携による飛騨・美濃おもてなしなどの新たな取り組みが望まれます。



【プロセッサによる枝条等の処理装置】

林地に残される枝条等を資源として活用するためには、加工や運搬にかかるコストを下げて収益をあげられるシステムをつくる必要があります。
プロセッサの作業ヘッドに枝条等をチップ化する機能を加えた装置をメーカー等との共同研究により開発し、特許出願しています。造材から連続して端材をチップ化することができ、枝条等を取り扱う作業工程を簡略化することができました。  この8月には再生可能エネルギー特別措置法が成立したところであり、これら新技術の利用と法律の後押しにより、県下をはじめとする林業地での未利用木質資源による地域の活性化が期待されます。
 県有特許は、収益の一部を実施料として県に支払う契約を結ぶことで使用することができます。県の技術を使っていただいているということで、県の広報活動などとの連携も可能です。メシマコブの培養と朴葉茶の製造については、既存の設備を活用すれば投資を最小限に抑えることができ、技術も難しいものではありません。企業・個人に関わらず関心を持っていただけましたら、森林研究所へ問い合わせ下さい。

写真1 野生メシマコブ
写真1 野生メシマコブ
  
写真2 ほお葉茶 写真3 新型プロセッサ
写真2 ほお葉茶 写真3 新型プロセッサ