路網開設による濁水被害を防ぐ方法
沈砂池の効果

(岐阜県森林研究所) 臼田寿生



はじめに

岐阜県森林研究所では、作業道などの路網の開設による濁水被害を防ぐため、濁水流出の実態調査および抑制技術の開発に取り組んでいます。路網開設による濁水流出の実態については、本誌(森林のたより)644号(2010年1月)でご紹介したとおり、路網の開設中や運材作業中に濁水が発生しやすくなります。

路網からの濁水流出を抑制する方法については、いくつか検討を進めているところですが、今回はこの中から、濁水中の土砂流出を抑制する方法として期待される「沈砂池」(図1、図2)の効果の検証結果についてご紹介します。



沈砂池 土砂を捕捉した沈砂池
図1 沈砂池 図2 土砂を捕捉した沈砂池


沈砂池の効果

土砂のうち、濁水の主な原因となるは、粒径2mm未満の砂、シルト、粘土といわれています。このうち沈砂池で捕捉される土砂を把握するため、沈砂池に見立てた樹脂製のたらい(直径約60cm、深さ約30cm)による実験を行いました。沈砂池は、開設直後の作業道(土質:礫質土)の路面排水の流末に設置しました。さらに沈砂池で捕捉できずに流下する土砂を把握するため、沈砂池の下流でも土砂を捕捉するようにしました。

総雨量110mmの降雨後に沈砂池とその下流で捕捉された土砂を回収し、粒径別に乾燥重量を測定しました(図3)。沈砂池で捕捉された土砂は、砂が約7割を占め、粘土、シルトから礫まで幅広い粒子で構成されていました。一方、沈砂池で捕捉できずに流れ出した土砂は、ほとんどが粘土、シルトでした。

この結果から、沈砂池は、濁水に含まれる土砂のうち、砂を主体とする比較的大きな土粒子を捕捉し、濁水の土砂濃度を低下させていることがわかりました。しかし、粘土、シルトなどの小さな粒子は、捕捉されず下流へ流れてしまうものも多く、今後はこれらの小さな土粒子への対処方法を検討する必要があります。



おわりに

沈砂池で止められない土砂への対処方法としては、林地への浸透が有効であると考えています。これについては、実際に路面からの排水が安定した林地へ誘導されている箇所において、濁水は地下へ浸透し、下流への流出が抑制されていることを確認しています(図4)。今後は排水に適した林地の条件などを詳しく検証し、濁水流出抑制技術の開発を進めていきます。



沈砂池の中およびその下流で捕捉された土砂の内訳 林地への濁水の浸透
図3 沈砂池の中およびその下流で
捕捉された土砂の内訳
図4 林地への濁水の浸透