ムキタケの栽培
〜その2〜

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



森林のたよりNo.656号にてムキタケの栽培についてご紹介しましたが、その後の状況をお伝えします。

【栽培に適した菌株を探して】

森林研究所では、県内の山林で採れた野生のムキタケから菌糸を分離し、冷蔵保存した菌株を10数株所有していますが、各菌株はそれぞれ特性に差があります。例えば、菌床による栽培試験で子実体(キノコ)の発生量が多いものとして選抜した数株は、外観の色にも差がありました。ムキタケはもともと黄色っぽいのですが、発生させた子実体は傘部分の黄色味が強いもの、黒色味が強いもの、紫色がかったものなど様々でした。さらに、現在保存している菌株は、菌床栽培物の試食の結果いずれも苦味を持っており、その苦味の強さにも菌株間で差がありました。苦味は下ゆでなどで軽減されるようですが、商品性を高めるには、さらに苦味が少ない菌株を、これからも県内山林から探し続ける必要があります。


【原木栽培での特性は?】

菌床栽培に適していることを基準に菌株を選抜してきましたが、今年四月、選抜菌株のひとつを原木に接種する試験を行いました。試験地は間伐後のヒノキ人工林の林床に原木をふせてメッシュシートをかけただけの簡易なものです。来年秋の発生状況を確認する予定でしたが、今年の10月から発生が始まりました。現在、同時に植菌した市販種菌のムキタケ菌株と成績を比較している最中ですが、当所で選抜した県内野生株が、原木栽培においても、植菌当年から旺盛に発生する優秀な菌株であることが分かりました(写真)。

写真

発生した子実体は菌床栽培で発生させたものよりも傘径が大きくてみずみずしさがあり、天然ものに近いボリューム感がありました。今後、菌床栽培で同様な子実体を発生させることができるのかが課題です。


【廃菌床を利用した栽培試験】

ムキタケの菌床栽培の効率化の手法を探索するため、他のキノコの菌床栽培後に排出される使用済み培地(廃菌床)の利用がムキタケの発生に及ぼす影響を検証しました。
 ブナ材のオガ粉100%を菌床の材料に用いるものを対照区とし、その材料を廃菌床で割合を変えながら置き換えてみました。廃菌床は栽培期間が比較的長いブナシメジのものとし、廃棄直後のものと、廃棄後3ヶ月間野外に堆積したものとを用意して、ムキタケ子実体発生への影響を比較しました(各培地460g詰めビンで70日間培養)。
 結果、培地材料の25%を廃菌床に置き換えても対照区と同等以上の発生量があることが分かりました(図1,2参照。発生量が多く、かつ発生操作後1番発生までの所要日数が安定していたのは堆積廃菌床で25%置換した区「T25%区」でした)。

図1,図2

今後もムキタケの特性を確認しながら、良質な子実体を、より効率的に発生させる技術を開発していきたいと思います。