毒きのこ(2)

(岐阜県林業センター)高橋智恵


キノコの形態
キノコの形態

 日本でみられるキノコは約1,500種で、このうち食べられるキノコは約300種です。現在栽培されているキノコは、約20種類と僅かなため、多くのキノコを山野に求めることになります。ここで忘れてはいけないのが、山野には食中毒をおこす危険なキノコもあるということです。その数は数十種といわれていますが、命にかかわるような毒キノコは十数種です。ですから、楽しいキノコ狩りをするため、まず毒キノコを覚えましょう。
 昔から俗説として「縦に軸(柄)の裂けるキノコは食べられる」とか、「ナスを食べれば毒消しになる」とか、「塩漬けにすれば毒はなくなる」とか、「虫が食べているキノコは食べられるキノコだ」などと言われます。
 しかし、このような判別方法は、どの毒キノコにでも通用する有効な方法ではありません。例えば、前報(1990年9月号)で紹介したツキヨタケのように、シイタケによく似ていて、かつ、よく裂ける毒キノコも多くあります。
 一般に毒キノコに共通する特徴はなく、簡単な判別法もないため、毒キノコ自体を一つ一つ覚える必要があります。
 そこで、今回は形態的特徴によるキノコの見分け方と代表的な毒キノコについて紹介します。


◆キノコの形態
 図は、キノコの中でも特に形の複雑なテングタケ属のキノコの形態を表わしたものです。つぼ、つばがキノコのどこの部分を表わしているのかをみてください。この他、傘を持たないホウキタケ、傘、柄共に持たないキクラゲ等もあります。形態、色、大きさ、発生場所(どんな林の、どこにキノコは生えているのか、地面からか、それとも倒木からか)などはキノコを見分ける手がかりとなります。

◆食中毒になるキノコ
 前報でツキヨタケ、ドクツルタケ、クサウラベニタケを紹介しました。これらのキノコが食中毒を引き起こす代表的なキノコです。今回は食中毒の発生件数は少ないが、誤食の恐れのあるシロタマゴテングタケ、ニガクリタケを紹介します。

◆シロタマゴテングタケ(テングタケ科)
シロタマゴテングタケ
シロタマゴテングタケ
 このキノコは全体が白色で、傘の大きさは6〜15cm、柄の長さは14〜24cmで柄の上部につばを持ち、下部にはつぼを持ちます。夏から秋にかけて林内の地上にはえます。
 中毒症状としては、食後数時間後に下痢、嘔吐等の症状が出て、肝臓が冒され、適切な処置をしないと命を落とします。比較的大型のキノコのため、一本食べると危険といわれます。
 色が白くてつば、つぼのあるキノコ(よく似たキノコにドクツルタケ、タマゴテングタケがあります。これらも危険な毒キノコです)には気をつけましょう。

写真は「今関六也・大谷吉雄・本郷次雄(1988)日本のきのこ.株式会社 山と渓谷社」より


◆ニガクリタケ(モエギタケ科)
ニガクリタケ
ニガクリタケ
 傘の大きさは2〜5cm、色は硫黄色で中央は黄褐色、柄の長さは5〜12cmで傘と同色です。春から秋にかけて切り株、倒木に群がってはえます。
 中毒症状としては、食後三十分〜三時間後に下痢や嘔吐、腹痛、ケイレン、視力の低下、手足のマヒ等の症状があらわれます。命に別状はないといわれますが、過去に死亡例もあり、要注意のキノコです。
 よく似たキノコに食用のクリタケ(ニガクリタケにくらべ全体に大型でがっしりしたキノコで傘の色は褐色)、ニガクリタケモドキ(外見はそっくり、ニガクリタケのように群がらず、数本ではえている)があります。しかし、このキノコには分かりやすい鑑別法があります。ニガクリタケは、名前のとおり苦い味がするためその場で噛んでみれば分かります。

写真は「今関六也・大谷吉雄・本郷次雄(1988)日本のきのこ.株式会社 山と渓谷社」より


 一般に、キノコは同じ種類のものであっても発生地の環境や、キノコの生長段階によって形、大きさ、色が大きく異なる場合も多くあります。ですから、「疑わしきは食さず!!」に徹してください。
 なお、当センターでは、野生キノコの標本及び種の保存を実施しておりますので、キノコ採集にご協力をお願いします。


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