花粉症対策品種の種子増産に向けて(I)
−固化培土をさし床に用いた少花粉スギのさし木の検討−

(岐阜県森林研究所) 茂木 靖和

森林のたより 2026年8月号掲載



社会問題となっているスギ花粉症の対策として、主伐後に特定母樹や少花粉品種といった花粉症対策に貢献する苗の植栽があります。岐阜県では、2008年と2019〜2021年に少花粉、2020〜2021年と2023年に特定母樹のスギミニチュア採種園を造成し、種子配布を行っていますが、未だ需要量に達していません。このため、少花粉スギのミニチュア採種園の追加造成を計画したところ、採種園に配置する採種木(母樹のつぎ木またはさし木苗)の配布を受けるのに時間がかかり、採種園造成が円滑に進まないことが明らかになりました。そこで、既に設定済の少花粉スギのミニチュア採種園から材料を採取してさし木を行い、採種園に配置する母樹育成の検討を開始しました。

1.固化培土をさし床に用いたさし木

2024年4月2〜3日に岐阜県白鳥林木育種事業地(郡上市白鳥町中津屋)で2008年設定のスギミニチュア採種園に配置された15品種のさし木を、固化培土のさし床で実施しました(表)。さし床に固化培土を採用した理由は、培土が固結していることから移植が容易で作業効率が向上すること、根が乾きにくいため移植ストレスが少なく育苗の成績向上が期待できること、培土から穂木を抜き取らずに発根の有無を確認できる(図1(b)(c))ため穂木へのストレスが少なく、発根評価後もさし木の継続に大きな支障が無いことによります。

2.さし木の結果

図2は、2024年9月2日時点と2025年4月30日に追加された品種別発根率を、2025年4月30日の発根率が高かった順に左から並べたものです。2025年4月30日の発根率は0〜96%で、これまでの報告と同様、品種によって大きく異なりました。また、発根率上位4品種の北群馬1号、多野2号、群馬4号、南会津4号では、2024年9月2日時点で2025年4月30日評価の8割以上が発根していたことから、早期に育苗を開始できる品種と考えられました。その一方で、発根率下位4品種の長野5号、下高井17号、大野2号、多賀2号では、2025年4月30日においても発根率が10%に満たなく、さし木条件の再検討が必要でした。

3.今後の予定

発根率上位4品種では、2024年9月2日に発根した穂木を当日に培土を詰めたコンテナへ移植することで、2026年4月22日には圃場へ移植可能なさし木苗に育成できました(図3)。今後も、今回の方法により採種園の配置に必要な母樹育成を進めていくことができると考えています。発根率下位4品種については、さし床や発根促進処理の条件に加えて、材料を採取する母樹に対して施肥を行い穂木の栄養状態を改変することで発根を促せないか検討を開始しました。残りの7品種については、2025年5月に発根した穂木をコンテナへ移植して育苗を開始した苗の成育状態と採種園造成に必要な母樹の本数から、今回の方法を採用するか、発根率下位4品種と同様の検討が必要かを判断したいと思います。