雑草木を知り植栽木を知れば下刈り危うからず

(岐阜県森林研究所) 宇敷 京介

森林のたより 2025年10月号掲載



〇下刈りは辛い

下刈りは、真夏の炎天下で行われる過酷な作業です。筆者も試験地で下刈りを行いますが、午前中のうちに意識が朦朧とし、その後の作業は困難でした。 これが事業であれば、なおのこと大変です。加えて、林業従事者は減少傾向にあるため、下刈りの期間や回数の削減は急務といえます。 半面、下刈りは植栽木の成長に必要な作業であるため、むやみな削減は植栽木の成長を阻害する恐れがあります。そのため、過不足のない下刈りが必要です。 個々の造林地の状況に応じた下刈りを行うことで、過不足なく、合理的に下刈り期間を設定できるのではないでしょうか?

〇造林地の植生とその高さ

様々な下刈り履歴の120地点の造林地で雑草木を調査しました。一口に雑草木と言っても、その中には多くの種が含まれます。これを植物の性質によって分けた生活型(木本、草本、ササ、シダ)ごとにみると、造林地でのそれぞれの高さ(最大植生高)は、200p前後となっていました(図-1)。この高さは、毎年下刈りをした造林地において、1年間に再生する高さといえます。一方、下刈りを省略した造林地の木本の中には400p程度になる個体がみられました。

〇下刈りを繰り返すと・・・

次に、下刈りの累計回数と造林地を優占する植生の関係をみると、下刈りの累計回数が増えると、木本が優占する造林地(木本型)の割合が減り、草本(主にススキ)が優占する造林地(草本型)の割合が増える傾向がありました(図-2)。このことから,、下刈りを繰り返すと、木本型は草本型に移行する可能性があります。また、ササが優占する造林地(ササ型)は累計回数に依らず一定の割合で出現しました。シダ(主にワラビ)が優占する造林地(シダ型)は稀なようです。

〇知略によってヒノキ造林地の下刈りを考える

以上の結果から、岐阜県内のヒノキの植栽適地における戦略的な下刈りを考えてみます。雑草木が1年間で再生する高さは200p前後のため、植栽木がその高さを越えるまでは、毎年の下刈りが必要と考えられます。特に、岐阜県産のヒノキコンテナ苗の多くは初期成長を促進しているため、初期の下刈りは重要です。この苗を植栽し、毎年下刈りを実施すると、4年後には200pに到達する(本誌863号参照)ため、木本型以外は、その時点が下刈り完了の目安になります。一方、木本型は、下刈りを省略すると200pを越える可能性があるため、その後も下刈り要否の判断が必要です。ただし、草本型への移行が確認できれば、下刈り完了と考えられます。 そのため、下刈りを一律の基準で行うのではなく、植生に応じて要不要を見極めることで、下刈りを過不足なく、かつ省力的に行える可能性があります。つまり、林地を優占する雑草木(敵)と植栽木(己)の成長特性を知れば、合理的に下刈り期間を短縮できると考えられます。

  
図-1.各生活型の最大植生高 図-2.下刈りの累計回数と造林地を優占する植生の構成割合