(岐阜県森林研究所) 大橋 章博
森林のたより 2025年7月号掲載
ハナノキは、ムクロジ科カエデ属に属する日本固有種です。その分布は、岐阜県東濃地方、愛知県北部、長野県下伊那地方の湧水湿地に限られており、環境省のレッドリストランクで絶滅危惧U類に指定されています。しかし、多くの自生地は土地開発などにより減少し、ハナノキ集団の分断・孤立化が進むなど、ハナノキを取り巻く環境は急激に悪化しています。
そんな中、2023年に外来種であるツヤハダゴマダラカミキリ(以下、ツヤハダ)が岐阜県に生息していることがわかりました。研究所で調査した結果、ツヤハダは街路樹のハナノキを好んで加害しており、このまま、ツヤハダの生息域が拡大すると自生するハナノキ存続の脅威となることが危惧されます。
そこで、今回はツヤハダの生態と岐阜県における加害状況について紹介します
ツヤハダは元々中国東部から朝鮮半島に分布する種ですが、1980年代に北米やヨーロッパに侵入し、様々な樹木を加害、枯死させることから、「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されています。
日本では2002年に神奈川県で初めて被害が確認されたものの、完全駆除されました。しかし、2020年に兵庫県で確認されたのを皮切りに、日本各地から発生報告が続き、現在では岐阜県をはじめ、14都県で発生が確認されています。
このような急速な拡大を受けて、2023年に特定外来生物に指定されました(このため、ツヤハダを生きたまま持ち帰ったり、飼育することはできません)。
日本には、ツヤハダとよく似たゴマダラカミキリが生息しています。
カミキリと言えば本種を思い浮かべるほど馴染み深く、果樹類の害虫としても有名です。両者の外観はよく似ていますが、区別点として、ゴマダラには上翅付け根(図2)にこぶ状突起が多数ありデコボコしているのに対し、ツヤハダではつるっとしています。
生態面では、ゴマダラは幹の地際や地中部に産卵するのに対し、ツヤハダは幹や枝に産卵します。また、ツヤハダの産卵痕(図3)は特徴的で、直径1から2センチの円形にかみ傷をつけ、その中心に産卵します。産卵痕が新鮮なうちはよく目立ちますが、時間とともに褐色になり目立たなくなります。
![]() |
![]() |
ツヤハダの主な加害樹種は、国内ではアキニレ、カツラ、トチノキ、ヤナギ類です。一方、岐阜県内ではハナノキからのみ見つかっており、他樹種からは確認できていません。
2023年に土岐市、瑞浪市、恵那市、中津川市内のハナノキ植栽木498本を調査したところ、半数以上の260本から産卵痕が見つかりました。被害は4市全てで確認されるなど広範囲にわたっており、本種の移動距離を考慮すると、ツヤハダはかなり前からこの地域に侵入していたと考えられます。また、産卵痕が見つかった木の数に比べ、脱出孔は非常に少なかったことから、県内でもハナノキ以外の樹種でツヤハダが繁殖している可能性があります。
![]() |
これまでのところ、ツヤハダの被害は、公園や街路樹など人為的な影響を受けた場所に限られています。しかし、生息数が多くなれば山林等へ生息域が拡大する可能性があります。
今後は、ツヤハダの発生源がどこかを明らかにするとともに、自生するハナノキの被害状況を明らかにし、地域全体で効果的な防除対策を考えていく必要があります。