(岐阜県森林研究所) 宇敷 京介
森林のたより 2024年7月号掲載
ドローンは、空撮や測量、農薬散布など様々な分野で活用されています。林業分野でも、労働強度の低減や作業の効率化に向け、苗木や資材を運搬する取り組みが進められています。現在、再造林では、獣害対策はほぼ必須にも関わらず、各種対策の労働強度は非常に高いと言えます。今回はドローンで忌避剤を散布する試験を行いましたので、ご紹介させていただきます。
ドローンは10Lタンクを搭載した農薬散布ドローン(図.1)を用いました。まずは、平地に1.8m間隔で並べた苗木に対して、ドローンについているカメラで苗木を目視し、1本ずつ散布をしていきました(図.2)。試験は、高さ2mから1秒当たりの噴霧量8mlで6秒間と6mlで8秒間(薬液の使用量に準じて1本あたり約50mlになるように調整)で散布しました。苗木の梢端、主軸に感水試験紙をとりつけ(図.3)、その変色の度合いから忌避剤の付着を評価しました(図.4)。
その結果、両条件とも、主軸で約7割の苗木に付着していました。一方で、梢端では、約3割の苗木にしか付着していませんでした。また、傾斜地でも同様の条件で散布を試しましたが、平地よりも散布できませんでした。
本試験からドローンで忌避剤を散布するうえで、いくつかの課題が見えてきました。まず、ドローンや散布される霧状の忌避剤が風に煽られ流されることです。それに伴い、散布の精度は苗木ごとに異なっていました。加えて、苗木の梢端も風に煽られ揺れやすく、忌避剤の付着の程度に影響したと考えられます。次に、苗木の位置の特定や1.8mの苗木間の移動に時間を要することです。
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図.1 試験に用いたドローン | 図.2 平地での散布試験 |
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図.1 感水試験紙 水の付着で青く変色する。 変色の度合いでかかり具合を評価した。 |
図.2 感水試験紙による評価 0〜5の6段階で付着を評価 手散布では5のようになる 3〜5になった場合を付着したと判断した |
現状、ドローンによる忌避剤の散布は、おおきく3つの課題により、手散布より精度が低く、時間を要する結果となりました。課題を解決し、効果的かつ効率的に散布を実施するためには、風の影響を低減するような散布の技術や苗木の位置を正確に把握する、風速や風向から散布する位置を決定できるような技術が必要となると考えられます。