(岐阜県森林研究所) 片桐 奈々
森林のたより 2022年11月号掲載
シカの食害を防止する対策のひとつに、ツリーシェルターがあります。ツリーシェルターは施工した後、手間がかからないという話をたびたび聞きますが、それは大きな間違いです。施工後に放置すると、健全に造林できない可能性があります。
市販されているツリーシェルターは主に、苗木に被せる筒状の本体部(プラスチック筒、プラスチックネット板、ネット布の3種類)と、本体部を支える支柱で構成されています(図1)。
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図1 ツリーシェルターの構造 (1)プラスチック筒、(2)プラスチックネット板、(3)ネット布 |
まず、図2のような樹形異常の発生が挙げられます。樹形の異常は時間が経過すると治せないため、早期発見して異常部を剪定し、脇芽を頂芽に誘導する必要があります。
またツリーシェルターは積雪に弱く、耐雪性の高い支柱でも折れる可能性があります(図3)。雪解け時期に、施工地を見回り、倒れたツリーシェルターの補修を行う必要があります。
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図2 ツリーシェルターで起こる樹形異常 全ての本体タイプで樹形異常が起こる可能性がある。 特にネットタイプは、メッシュサイズが大きいと 頂端が外に出て曲がったまま成長することがある。 |
図3 積雪によるツリーシェルターの倒伏被害 耐雪用の径4cmの支柱も倒れる被害が確認されている(上)。 |
他にもツリーシェルター本体部のタイプで苗木の生長の仕方が変わることもわかっています。より詳しく知りたい方は、森林研究所HPで公開中の手引書(シカ食害防止対策のメリット・デメリットとその対処法〜防除を効果的に行うために〜)をご覧ください。シカ柵や忌避剤散布についても解説しています。
ツリーシェルターは、適切に施工・管理すればほぼ確実に食害から苗木を保護することができます。これは対策を実施するうえで、最も大切なことです。施工地を適切に管理し続けることではじめて食害防止効果が得られることを認識する必要があります。