衛星画像を使って伐採等の森林の変化を抽出する取り組み

(岐阜県森林研究所) 久田 善純



市町村や県農林事務所における森林管理業務は、伐採届の管理や災害の確認等多岐にわたります。広範囲の森林を対象に、人為や災害による変化を、より早期に把握するためには、現地確認を支援する仕組みが必要です。
  そこで、任意の間隔の衛星画像から、伐採等による森林の変化を、広域的に抽出する手法を検討しました。

変化を抽出する取り組み

使用した衛星画像は、毎日撮影が行われているPlanet社のDove衛星の画像(地上解像度3.7〜3.0m)です。
  画像のデータを解析すると、植物の量や活力を表す指標値(正規化植生指数)を算出できます。この指標値を任意の二時期の画像上で算出して比較し、値が減った部分を図化すると、伐採や土砂崩壊によって植生が減った可能性のある箇所を抽出することができます(図1)。
  抽出は県内5市町村の一部地域を対象に行いました。比較作業に適した画像(雲の少ない日)の取得数は天候に大きく左右されました。また、山の影となる部分では抽出精度が低くなるため、影が少ない時刻に撮影した画像を取得する必要がありました。毎日撮影があっても、   比較できる二時期の間隔に制限があることが分かりました。また、抽出した箇所数や形状の精度は、比較作業時の設定(閾値)に左右され、誤抽出(雲の影等)は手作業で除く必要がありました。   
図1 伐採の前後の画像(a,b)から得た植生の指標値の差分の例(皆伐再造林事業地)
図1 伐採の前後の画像(a,b)から得た植生の指標値の差分の例(皆伐再造林事業地)

市町村・農林事務所での試行

定期的に皆伐や土砂崩壊の箇所の抽出を行い、その結果を該当地域の市町村、農林事務所に提示したところ、図2の(a)(b)に示す例のように、森林が変化した箇所や範囲を把握しやすくなるため、伐採届の実行箇所調査や被害箇所把握の参考として使えるとの感想をいただきました。
  一方、抽出した形状(伐採や土砂崩壊により森林が変化した境界の部分)(図2(b)中の赤枠の線のこと)の精度が悪い箇所がいくつか見つかっており、精度や解像度をもっと良くしてほしいという意見もありました。

      
図2 伐採箇所を抽出した例(伐採前:a, 伐採後:b)、並びに、同範囲の空中写真(ふぉれナビ)(c)と現地の遠景写真
  
  伐採箇所を抽出した例(伐採前:a, 伐採後:b)、並びに、同範囲の空中写真(ふぉれナビ)(c)と現地の遠景写真
※図(b)中の赤枠:伐採部分として抽出した範囲

いただきました様々な意見、提言を踏まえ、今後も抽出の手順や精度の改良に取り組んでいきます。