コンテナ苗は低コスト?(W)
-低コスト再造林を推進するためのヒノキ優良苗育成方法の技術移転-

(岐阜県森林研究所) 茂木 靖和



これまで、本誌731号と755号、779号、780号で、低コスト再造林の実現に向けたヒノキコンテナ苗(以下、コンテナ苗とする)育成の取り組みを紹介してきました。
  今回は、この中で得られた研究成果を、コンテナ苗育成に取り組む生産者や苗利用者(造林者)の方々へ技術移転するためにとりまとめた指針書(図1、こちらより入手できます)の紹介と、現在の技術移転状況をお知らせします。

  
図1 技術指針書
図1 技術指針書

1.技術指針書の特徴

技術指針書は、基礎編と応用編で構成されています。(図1)基礎編では、コンテナ苗の基本や育成から植栽の流れを初心者が理解しやすいように写真を多く使って説明しています。(図2) 一方、応用編では、これまでに本誌でも紹介した植栽後の初期成長量が大きいコンテナ苗や、急傾斜地での植栽時間が短いコンテナ苗などの育苗や植栽の研究成果(新技術)を、根拠となる図表を使って説明しています。(図3)
  コンテナ苗初心者は基礎編の後に応用編を、熟練者は気になる応用編を、利用者は基礎編の植栽と応用編をご覧いただくことで、今後のコンテナ苗育成や造林の際の手助けとなるヒントが見つかるのではないかと考えています。

  
図2 基礎編の例 図3 応用編の例
図2 基礎編の例 図3 応用編の例

2.技術移転状況

技術移転の一例として、応1の超緩効性肥料を元肥に用いた育苗技術(図3)は、岐阜県山林種苗協同組合所属の生産者の方々に利用されています。これにより、岐阜県で生産されるコンテナ苗の多くが、植栽後に初期成長の促進が期待できる苗木へバージョンアップしたと考えています。

コンテナ苗を利用した造林技術は発展途上です。この技術の確立は、苗の品質向上と適切な利用が欠かせません。苗生産者は植栽後の活着や成長に対して配慮することで、造林者は失敗事例の公表や、生産者へ苗に対する要望・意見をフィードバックすることで、技術の向上が進むと思います。 当所も、技術の開発に合わせて指針書を更新していくことで、「コンテナ苗は低コスト!」を実現させたいと考えています。